日本の話芸 春風亭昇太 落語「二番煎じ」町内の火の用心…ひそかに持参した酒と猪の肉で鍋を楽しみ始めたところに…


出典:『日本の話芸 春風亭昇太 落語「二番煎じ」町内の火の用心…』の番組情報(EPGから引用)


日本の話芸 春風亭昇太 落語「二番煎じ」[解][字]


第727回東京落語会から春風亭昇太さんの落語「二番煎じ」をお送りします(令和2年1月17日(金) 東京・虎ノ門 ニッショーホールで収録)


番組内容

第727回東京落語会から春風亭昇太さんの落語「二番煎じ」をお送りします(令和2年1月17日(金) 東京・虎ノ門 ニッショーホールで収録)【あらすじ】町内の火の用心のために、集まって夜まわりをする人々。寒いので拍子木をふところの中でたたいたり、「火の用心」が謡の調子になってしまったりてんやわんや。ひとまわりして休憩時間中に、ひそかに持参した酒と猪の肉で鍋を楽しみ始めたところに…

出演者

【出演】春風亭昇太


『日本の話芸 春風亭昇太 落語「二番煎じ」町内の火の用心…』のテキストマイニング結果(ワードクラウド&キーワード出現数ベスト20)

日本の話芸 春風亭昇太 落語「二番煎じ」町内の火の用心…ひそかに
  1. ネギ
  2. 用心
  3. 先生
  4. 黒川
  5. 伊勢屋
  6. 大変
  7. 東京
  8. フッ
  9. 今日
  10. 土瓶
  11. お願いいた
  12. ハハハ
  13. ハハハッ
  14. 駄目
  15. 年長
  16. 番屋
  17. 時間
  18. 拙者
  19. 町内
  20. 拍子木


『日本の話芸 春風亭昇太 落語「二番煎じ」町内の火の用心…』の解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)


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(拍手)

どうも ありがとうございます。

ってなわけでして 今日は 皆さんに
こちらの方で 落語を聴いて頂くという

そんなビッグなイベントに
参加して頂きまして

まことに ありがとうございます。

え~ ねえ あの… 皆さん 僕のことを
知ってるか知らないか知りませんけど

僕も あの… 暮らしぶりが
だいぶ変わってまいりまして

あの~ 去年ね あの~ 何か

ずっと一人の世界から
脱却いたしまして

結婚したんですけど いろんなとこでね
「おめでとう」って言われまして

すごかったです。 したばっかりの頃はね。
もうね 至る所で言われたんです。

ここでも言われるか
っていうぐらいのとこで…。

一番言われたのがね 横断歩道の
信号待ちで すごい言われました。

並んでるでしょう。
そうすると 横の人は 僕 発見して

「あっ! よかったね!」とか言って
肩たたかれたりなんかしてね。

で 横断歩道 歩き始めるじゃないですか。

そうするとね 前の方からね おばちゃんが
5メートルぐらい前から 僕を発見して

もう しがみつくように
向こうから小走りで走ってきて

「あなた よかったわね! おめでとう!

できると思ってなかったから
本当うれしいわ! よかったわね!」。

で おばちゃんがね
前から歩いてきた男の人につかまって

何か しゃべってるから 周りの人も
「一体 何だろう?」と思うんでしょうね。

パッと見ると 僕だから
新しいおばちゃんが参戦して

「よかったわね~!」。
また 別のおばちゃんが「おめでとう!」。

もう すごい言われたんですよ。

まだね 横断歩道で言われる分には
まだ いいんですけど。

え~っと… そのころね ちょうど
僕の大学時代の仲間がいて

で うちも近所だから
よく飲んでる友達がいるんですが

そいつのお父さんが亡くなったんですよ。

で 僕は そのお父さん
もう 大学の頃から知っているんでね

ごはんなんか食べさせてもらったことも
あるので

これは行かなきゃいけないなと思って
行ったら もうね…

親戚の皆さん こんな なってるし
そいつも こんな なってるんですよ。

かわいそうだなと思ってね
「この度は…」とか言ったら

親戚のおじさんが 3人 立ち上がって
「昇太君 よかったね~!

おめでとう!」。
もう お通夜の席でね

「よかった よかった おめでとう」
っていう声が飛び交って

すごい和やかな感じのお通夜に
なったんです。

でも まあ ありがたいですよね。

う~ん… まあ あの いろいろね
生活も制限される… ことが多いんですね。

今まで 僕ね
本当に自由に生きてきたんですよ。

好きな時間に ごはんを食べて
好きな時間に お風呂に入り

好きな時間に テレビを見て
好きな時間に 起きてたわけですよ。

最近はね
テレビのチャンネルを変えるのも

結構 大変なんだなってことが分かり…。

向こうが見てるとね
今 変えていいのかなとか

タイミングとか すごく こう…
考えたりなんかするんですよ。

でも いいこともありますよね。
あの~ 僕 冬になりますと

まあ 皆さん いろんな暖房器具
使ってると思うんですけど

僕ね 石油ストーブが大好きなんですよ。

しかもね 今のやつじゃなくて
ちょっと古いやつ探して

ちょっとレトロな感じのやつをね 探して
やってるんですよ。

で そうするとね
いくらレトロっていっても

古きゃあいいってもんじゃないんですよ。

やっぱりね 消火装置のついてるやつを
選ぶんですよ。

何か こう 地震があったりとか
あるいは けっつまずいたりとか

ああいう時に消えるように 振動でもって
消えるようになってるんですよね。

そういうのを まあ ギリついてるやつを
選んで 買ってね

まあ それで暖をとってるんですけども。

そうはいってもね あの…
出かける時ですよね 問題は。

ちゃんと切ったのかっていうのをね
1人暮らしの時は すごかったんですよ。

気が小さいんで 「切った」って
指さし確認してるんですよ。

「切ったな」って もう自分に…

「切ったな 切った 切った」って
言い聞かせて 出てね

鍵掛けようとすると
「あれ? もう一回 確認しよう」と思って

で また部屋に戻って
切ってあるんですよ。

切ってあるの分かってんだけど
「切った」って

もういっぺん 「切った 切った」って言って
それで出て… で 鍵掛けようとすると

「あれ? ガスの方は
どうだったかしら?」とか思って

また戻って
ガスの方 点検したりなんかして

それで ようやく表に出て
それで 電車なんか乗りながらね

「あれ 本当に切ったかな?」とか
思ったりするわけですよ。

それがなくなったのがね まあ いいかなあ
っていうぐらいなもんですよね。

う~ん… まあ 火事というのはね
実際怖いですし

東京に来てね 「あ~ 東京に
今 僕は住んでるんだな」って

すごく感じたことがあって
何かというと

あの… 僕が育った静岡には
なかったんですけど

東京に来て 初めて知ったんですよ。

「火の用心」を言ってくれる
おじさんたちっていうの。

あの 町内会のね おじさん…
多分 有志のおじさんたちなんでしょう。

「火の用心! カチカチ」って
やってくれてるんですよ。

僕が生まれた町には それ なかったんで
「うわっ 東京だ」って思ったんですよ。

東京に住んでる方は
気付いてないと思うんですけど

地方には ないんですよね。

多分ね あれはね 都会のものなんですよ。

何でかっていうと
まあ 江戸の昔からね

東京という町は これはもう
世界一の人口密集地帯で

しかも 木造家屋でしょう。

だから 火をすごく恐れてる町なんですよ
東京はね。

で こう うちとうちが
もう 隣接してるわけですよ。

だから 一軒が火を出したら

これ 燃え移っちゃうから
怖いわけですよ。

だから 自分のうちで 火の用心を
注意喚起してるだけじゃ駄目なんですよ。

町内中で 「火を気を付けましょうね
お互いに」っていうのが

あれは
「火の用心! カチカチ」なわけですよ。

静岡には なかったです。
うちとうちとが離れて建ってるから。

一軒焼けたら
そのうちだけが焼けるんですよ。

火事がね あると 近所の人が集まって
「あらあら」なんて 見てるだけなんですよ。

「すごいなあ」なんて
思ったりするんですけどね。

「いやいや 皆さん
いかがでございましょう。

今日もね 皆でもって
火の用心 回るんでございますが

いつものようにね 皆でもって こう
ぞろぞろ ぞろぞろ歩いて

『火の用心』 これ言って回るというのは
これは無駄というものでございます。

いかがでございましょう
今日のところはね

一の組と二の組に分けまして

で 一の組がね 外で もう
火の用心 触れて回ってる間

二の組は…
ここはね 番屋でございますから

遊んでるというわけじゃございませんよ。
この番屋を守って頂いて。

で 寒い外から
一の組が戻ってくるというと

十分に あったまった二の組が 今度
代わりにね 火の用心 触れて回る。

順番に行くというのは
これ いかがでございましょうか?」。

「ははあ なるほど。 それは
よいお考えでございますな 月番さん。

皆さん いかがでございます? ええ?

一同賛成 そうでございますか。
一同賛成でございますんで

ひとつね 差配の方
よろしくお願いいたしますよ」。

「ああ そうでございますか。
賛成して頂いて ありがとうございます。

それじゃあね
私 言いだしでございますんで

一の組 やらさしてもらいますよ。

それからね
黒川の先生 あなたも一の組だ。

黒川の先生 そこに拍子木があるでしょう。
それ 首から ぶら下げて

チョンチョンと いい音出しながら
火の用心 お願いいたします。

それからね 伊勢屋さん あなたも一の組。
八っつぁんもいこうか。

八っつぁん
そこに ほら 鉄棒があるでしょう。

鉄棒の先には このね ま~るい輪っかが
たくさんついてますよ。

地べたつく度に シャリンシャリンと
いい音がしますんで

それ持って お願いいたします。
宗助さん あなたもいこうか。

ではね 以上 これ 一の組でございます。
残りが 二の組でございますんで

え~ ひとつ こちらの方で
番の方をよろしくお願いいたします。

それじゃ 一の組
皆さん 行きましょう 行きましょう。

さあさあさあ よいしょ。
ハハハハハッ うわっ ハハッ。

あ~ 大変な寒さでございますなあ。
ハハハハッ。

いやいや しかしね 伊勢屋さん
先ほどね あなたが来る前に

皆でもって 集まりまして
あなたの噂をしていたんでございますよ」。

「え~ 私の噂を?
え~ 何でございましょう?」。

「いや あなたがね
お偉いという話ですよ」。

「え~? 私が偉い?」。
「あなた お偉い」。

「いやいや 私は偉くも何ともありません」。
「いや そんなことはありませんよ。

あなたはね 伊勢屋さんという
大きな御店のご主人様。

店には
若い者 何人もいるんでございますが

そういう若い者を出さないで
あなた自ら 出張ってらして。

毎日のように 火の用心 触れて回る。

皆でもって 『偉いもんだ』と
言ってたとこなんでございます」。

「いや そんなことございませんよ。
私ね 一番暇なんでございますよ。

こういうところにね
若い者を出すというと

次の日になりまして
お客さんの前で 大きなあくび。

そういう粗相があっちゃいけない
っていうんで

私ね 一番暇ですから 出張ってると。
こういうわけでございます」。

「そんなことございませんよ。
あなたは お偉い」。

「いやいやいやいや…
偉くはないんでございます」。

「いや そんなことありません。
あなた お偉い」。

「いやいやいや… 偉くないんだ」。
「いや あなたは お偉い」。

「いやいやいや 偉くない」。
「あなたは…。

ちょちょちょ… ちょっと待って…。
皆さん! 皆さん

私ね 今 伊勢屋さんを褒めてるところ。

皆さん ただ ぞろぞろ ぞろぞろ
歩いてるだけじゃ駄目でしょう。

火の用心を触れて回るのが
役なんでございますから。

大体ね 先ほどから
鳴り物が聞こえてきませんよ。

ええ? どうなっ… 黒川の先生

黒川の先生 あなた 出る時に
拍子木 首から ぶら下げてたでしょ?

今 どこ行ったんでございます?」。
「いや~…。

表へ出たら 寒いんでございます。

手が 『懐の中に入れてくれ』って
言うんでございます。

『じゃあ 入りなさい』って 入れましたら

拍子木の方も 『私も連れてってくれ』って
こう言うもんでございますから

今 仲よくね 私の懐の中で
暖をとってるんでございます」。

「鳴らさないといけないでしょ!」。
「いやいや

鳴らしてるんでございますよ」。
「音が聞こえませんが」。

「いやいや 寒いもんですから
表へ出さないでね

中に こうやって入れたまま
コッコッと鳴らしてるんでございます」。

「『コッコッ』じゃ しょうがないでしょ。
ええ? 鳴らさなきゃ…。

じゃあじゃあじゃあ 分かりました。
私も 手 出しますよ。

あなたも出しなさい。
そうやって チョンチョンと。

ああ いい音がするじゃありませんか。

それから… 八っつぁん!

八っつぁん お前さん
鉄の棒 持ってたろ?

それ どうしたんだ?」。
「いやいやいや 鉄の棒…

じかにつかむと 冷たいんでございます。

先んとこに 輪っかが
たくさん ついてましょう。

それ ここに引っ掛けまして ズルズルッと
引きずってるんでございます」。

「『コッコッ』 『ズルズルッ』じゃ
しょうがないでしょう。

あなた 若いんだから 最初のうちだけ。

しっかりつかんで そうそう…
シャンシャンと。

おお おお おお
いい音がするじゃありませんか。

それからね 私がね この黒川の先生を
一の組に入れたのは 訳がある。

黒川の先生は 謡の先生だ。 ひとつね
喉のいいところで お願いしますよ」。

「あ~ そうでございますか。 いやいや

喉がいいなんてことを言われると
恥ずかしいんでございますよ。

ええ そうでございますか。
いやいや じゃあ やらさして頂きます。

喉がいいなんてことを言われますと
恥ずかしいんでございます。

あっ うん… あっ うん…

あ~ あっ うん。 あ~ あっ うん。

あっ! あっ あっ あっ! あっ!」。

「早くやって下さいよ」。

「喉がいいなんてことを
言われたものですから

調子を整えておりまして。
うん あっ あっ うんうん…。

それでは…。

火の~ よ~うじん~!

火の元を 火の…」。

「やめて下さいよ!
こんな夜中に そんな声を出したら

病人が寝ていたら
迎えが来たと思うでしょ。

うまくないなあ…。
じゃあじゃあじゃあ 八っつぁん。

お前さんは職人さん。
威勢のいいところで お願いしますよ」。

「ええ 分かりました。 黒川の先生はね
これは 喉はいいんでございますが

低いの 駄目でございます。

こういうのはね
遠くの方にね 通らないといけない。

高い方がいいんでございますよ。
ハ~ ハ~! このぐらい高い方が。

ハ~! このぐらい高い方が
いいんでございます。

それでは いきますよ。
火のよ~うじん!

さっしゃ~りゃしょ~!」。

「結構でございます」。
「いいでしょ!

いいでしょ いいでしょ。
火のよ~うじん!

さっしゃ~りゃしょ~!」。

「結構でございます」。
「いいでしょ いいでしょ。 ねっ。

火のよ~うじん!
さっしゃ~りゃしょ~!

にゃにゃにゃにゃにゃ…」。

「すいません あの~ 高い声で よく通って
いいんでございますが

何ですか
最後の『にゃにゃにゃにゃ』ってのは」。

「ハハッ。 これはね 北風にあおられて
声がちぎれるとこ」。

「細かいとこは いいんでございますよ。

そうこう言ってるうちにね
町内 一回りしましたよ。

入れてもらいましょ。
さあさあさあ よいしょ。 ハハハッ。

あ~ 皆さん 一の組 回ってまいりました。
次は 二の組でございますよ。

え~… 拍子木 渡して
鉄棒も渡して。

それじゃあね
二の組 よろしくお願いいたします。

はいはいはい。 そこをね
ぴったりと閉めていって下さいな。

ええ ありがとうございます。
さあさあさあさあ 皆さん 火 あたり…。

二の組はね 気が利かないんだ。
寒い外から入ってくるんだから

もっと 火をおこしておいて…。
宗助さん そこに… そう 炭あるでしょ。

はいはいはい。 よいしょ。 さあ…。
もっとね こうやってね さあさあさあ。

フ~ッ フ~ッ フ~ッ。
フ~ッ フ~ッ フ~ッ。

ハハハッ。 さあさあさあ。
それじゃあね 火に あたりましょう。

火に あたりましょう。
さあさあさあさあ ハハハッ。

寒うございましたな」。
「いかがでございましょう 月番さん」。

「何です? 黒川の先生」。
「私に娘がおりまして

『お父っつぁん 毎晩ね
火の用心 ご苦労でございますが

風邪をひくといけない』と言われまして
こんなものを持たせてくれました…。

瓢に酒でございます。
これ飲みながらね

体のしんから温まるというのは」。

「黒川の先生
あなたは ここ どこだか分かって

そういうこと言ってるんでございますか?
ここ 番屋でございますよ。 ええ?

あたしたちばかりじゃない。
見回りの役人が来る。

そんな時 こんなもの
やったり取ったりしていたら

大変なお叱りでございますよ。 ええ?
こんなもの…。

あなたね 若い者が こういうことしたら
あなた 一番の年長だ

あなたが
叱ってくれなきゃいけないでしょ」。

「申し訳ございません」。
「もう こんなものあったら恐ろしい。

宗助さん これ そっちに持ってって。
そっちに持ってって。 そうそうそう。

もう恐ろしい そんなものは。
そっちに持ってって。 そう。

そこに土瓶があるでしょ?
中に何が入ってます?

…お茶が入ってる?
じゃあ 全部 空けて

水でゆすいで きれいにして
それを中に入れなさい。

全部… 全部入れなさい。

はい じゃあ こっちに貸して。 はい。

こうやって
火にかけるんでございますよ」。

「あ~ そういうことでございますか!

土瓶に お酒を移して 火にかけて

で この火でもって お酒をとばして
残ったお湯を飲む」。

「違いますよ。

そんなもったいないこと
するわけないでしょ。

違います。 いいですか。 ええ?
これね 瓢に酒。

これ やったり取ったりしていたら
これ お酒でございますから。

これはもう 土瓶の中に入れましたから
これはもう お酒ではございません。

煎じ薬ということであれば
何ということはない」。

「あっ そう…」。
「そうでございますよ。

そういうことに
なるんじゃないかと思って

私もね…
実は 一本持ってきたんでございます」。

「あなた 脅かしちゃ嫌でございますよ。

いや そういう話になりましたら
月番さん

私 こんなものを
持ってきたんでございます」。

「伊勢屋さん 何でございます?

え…? え? これ 拝見します。

あららら…
大変なものが出てきましたよ。

猪の肉でございますよ。
いや 私ね 猪の肉 よくやりますが

これ いい肉でございます。
色が違う。 いや これね…。

あ~…。

伊勢屋さん ありがとうございます。
大変ありがたいんでございますが

ここ 番屋でございまして
鍋がないんでございますよ。

鍋がないというと
これはね もう どうしようもない」。

「大丈夫でございますよ。

鍋は 私 背負ってるんでございます」。
「鍋を背負っている?

あら… 背中 丸まってるから
何かと思ったら

それ 鍋だったんでございますか!
あ~ あ~ 出てきた 出てきた。

冷たかったでしょう。
こちらへ 貸して下さい。 さあさあ。

それじゃあね
私 これ 作らさしてもらいますよ。

いやいやいや そうでございますか。
これは 大変な…。

まずはね 猪の肉でございます。
あら… こら いい肉でございますよ。

え~ え~ ヘヘッ…。

それからね 伊勢屋さんは苦労人。
ちゃんと ネギも添えてあります。

ネギというのがね あると ないとでは
鍋は もう違うんでございます。

ネギも こうやってね きれいに こう
横に並べまして

そしてね
この ネギと肉の間を取り持つのは

みそでございます。 みそというのは
ありがたい食べ物でございますな。

周りの味を
引き立たせるんでございますよ。

そしてね
体が あったまるんでございます。

ほらほらほら… ほらほら。
はいはいはい はいはいはい…。

それからね そういうことをすると
もったいないって言う人もいますが

私 やらさしてもらいますよ。
このね お酒を こうやって こうやって

え~ ほらほら ハハハッ。 たちまち
いい香りが立ってまいりました。

こうすると 肉がまた
やわらかくなるんでございますよ。

あ~ 出来た 出来た。
それじゃあね ここ 番屋でございまして

箸が一膳しかない。
町内の皆さん 仲がいいんでね

これ回しながら食べるということで

じゃあ まずはね
一番の年長の黒川の先生。

あなたから お願いいたしますよ」。

「ありがとうございます。
ご町内の方はね 親切な方が多い。

いつも 私のことを『年長だ年長だ』
立ててくれまして。

それじゃあ 早速 頂戴いたします。
あ~ あ~ ありがとうございます。

うわ~ あっ 久しぶりに…
フ~ッ フ~ッ フッ」。

「あ~… あ~…。

いい肉でございます」。

「あ~! お酒にも合いますな。
フ~ッ フ~ッ フッ。

あ~… あ~…。 猪の肉というのは
かむほどに 味が出るんでございます」。

「フ~ッ フ~ッ。

あ~ あ~…。 ハハハハハッ」。

「ちょっと待って下さい あなた!

箸一膳しかないんでございますよ。
一人でやっちゃいけません」。

「申し訳ございません。
あまりのおいしさに。

じゃあ 次は
伊勢屋さんでございますよ。

これ あなたが
持ってきたものでございますから

存分にお願いいたします」。
「いやいや 皆さん

見ましたか? 黒川の先生。
一番の年長でございますが

体がお若い。
真っ先に肉に箸が伸びました。

私もね 若い頃
さんざん これ やりましたが

もう駄目でございます。
今日はね 私は 肉じゃなくて

ネギ専門で やらさしてもらいますよ。
ネギもね 私は こういうね

よく火の通った
クタクタになったネギが好きで…。

こういう… こういうネギ。
こういうの好きなんだ。 こういうの。

フ~ッ フッ あっ…。

あっ! ねっ。 こういうネギが

よく火が通ったネギが
甘みが出るんでございます…。

うんうん… フ~ッ。 あ~…。

それからね
今日 ネギ専門でございますから

こういうのも やらさしてもらいますよ。
まだ あんまり火の通ってないやつ。

若い方 こういうのお好き。

え~ 私は こういうのは
あんまり やらないんでございますが

今日は ネギ専門でございます…。

フ~ッ フ~ッ フッ。 へっ!」

「大丈夫でございますか?」。
「だから こういうネギは

嫌なんでございます。
前歯で ギュ~ッと かみましたら

熱い芯が 喉の奥に
ギュ~ッと入ってまいりました。

だから こういうね…
よく火の通った…

ネギは うまい」。
「ちょっと待って下さい 伊勢屋さん。

あなたね さっきから
『ネギだ ネギだ』ってますが

ネギとネギの間に肉が挟まってるでしょ」。

「ハハハッ。 これは バレましたかな」。

「番の者は おるか?

番の者は おるか?」。

「大変だ…! 見回りの役人だ。

え~ え~ いいですか 皆さん
分かってますね?

これは お酒ではございませんよ」。
「分かっております」。

「それから 鍋が
ここにあっちゃいけない。

ちょちょ… はい はい はい…
八っつぁん 隠して。

はい 八っつぁん 隠して!」。
「えっ? ど… どうやって?」。

「『どうやって』って いいから 早く!
入ってきちゃうから!

じゃあ もうもう… 座って! はい。

鍋の上に座って!」。
「えっ 鍋?」。

「いいから早く!」。
「え~ ここ?

あっ! はっ!」。

「静かに 静かに 静かに」。

「お待ちどおさまでございました」。
「何をしておったのだ。 遅いではないか」。

「申し訳ございません」。
「あ~ 寒いではないか」。

「何だ その方たちは。
火の用心 触れて回っておらんのか」。

「いや そうじゃないんでございます。
一の組と二の組に分けておりまして

手前ども 一の組でございます。

先ほど 火の用心 触れて回って
戻ってきたとこでございまして

ただいま
二の組が回ってるんでございます」。

「おお そうであったか。
それは よい考えであるな。

また 火というのは ありがたいものだ。
ああ また うれしいな。

土瓶の口から湯気が立っておる。
これは お茶か?」。

「はい? 何でございましょう?」。

「土瓶の口から湯気が立っておるが
これは お茶か?」。

「お茶ですか?」。
「拙者が聞いておるのだ。 これは何だ?」。

「あれでございます。 あの あれ… あの…
お茶ではないんでございます」。

「お茶ではない?」。
「え~ あの あれでございます あの…

風邪をひいた者がおりまして
煎じ薬を煎じて

飲んでいたんでございますが
苦い煎じ薬でございまして

とても飲めたものじゃない。
これはもう捨ててしまおうと

今 話をしてたとこなんでございます」。
「おお そうであったか。

拙者もな 2~3日前から 風邪をひき
まだ引いておらん。

これを所望じゃ」。

「いや 苦いんでございます」。
「『良薬 口に苦し』だ。 出しなさい」。

「え~… もう…。

これ 煎じ薬でございます。
煎じ薬でございますよ。

煎じ薬を じゃあ 入れますので。
今 煎じ薬が 今 入っております。

あっ 煎じ薬が…」。
「何度も申すでない」。

「これは まことに 煎じ薬か?」。

「煎じ薬でございます…」。

「これが煎じ薬…。 あらためる」。

「よう分からん。

つぎなさい」。

「ハハハ…
これを煎じ薬だと申しおって…。

町人などと申すものは…。

ああ~。

バカ。 バカ。

ハハハハ…」。

「う~ん 苦くはないな。 辛口だ。 ハハハ」。

「つぎなさい」。
「あっ はい」。

「ハハハ これを煎じ薬…。 ハハハ。

先ほど 鍋のようなものを隠していたが
あれは何だ?」。

「見られている… あ…。

出どこが悪い。 向こうを見て頂くと
出るんでございます。

こっち見たら駄目でございます…。
向こうを見て…。

はい そうでございます。
八っつぁん 出して 早く 早く 早く。

鍋を出して!」。
「『鍋 出して』って…」。

「八っつぁん… つゆがないじゃあないか」。

「つゆは
ふんどしが みんな吸っちゃった」。

「つゆを出しなさい!」。
「『つゆを出しなさい』って…」。

「鍋が出ましたが」。
「うむ。 お~ 何だこれは。

猪の肉ではないか~!

このような ぜいたくなものをやりおって。
猪の肉 大の好物である。 うわ~。

この鍋 何か ペタ~ンとしておるな。
まあ よいよい。 フ~ッ フッ」。

「これは よい味だ…」。

「フ~ッ フッ。

これを毎晩やっておるのか?

…今晩が初めて?
それは よいところへ来た。

またな ネギ… ネギもある。
ネギもね これ食べさせてもらおう。

ネギというのは ずるい食べ物であるな。
周りの味を皆 吸ってしまうのだ。

う~ん… ハハハ。

やはり ネギは ずるい食べ物だな。
ええ?

隣にあった こうな… 肉の味

それからな… みその味

ネギ自らの味…

あと 何の味であろう…。

これは 何の味だ?」。

「言えないんでございます」。
「なぜ言えんのだ」。

「いや 言えないんでございます」。

「隠し味か? ああ そうであろう。

家々によってな
隠し味というものがあるのだ。

知恵を絞ったのか?」。
「絞ったんでございます」。

「おお そうであったか。
それはよいよい。

さあさあ つぎなさい」。
「ちょっと みんな飲まれちゃう」。

「分かってる 分かってる。
申し上げます 申し訳ございません。

その 煎じ薬なんでございますが

その土瓶の中に入ってるだけで
もう おしまいなんでございます」。

「おお そうであったか。
拙者が 皆 やってしまったか。

分かった 分かった。 じゃあ これからな
拙者 町内を一回りするゆえ

二番を煎じておけ」。

(拍手)

♬~


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