SWITCHインタビュー 達人達(たち)「ムツゴロウさん」でおなじみ、畑正憲×注目の漫画家、五十嵐大介…


出典:『SWITCHインタビュー 達人達(たち)「畑正憲×五十嵐大介」』の番組情報(EPGから引用)


2020/08/29(土) 22:00:00 ~ 2020/08/29(土) 22:50:00
SWITCHインタビュー 達人達(たち)「畑正憲×五十嵐大介」[字]

「ムツゴロウさん」でおなじみ、畑正憲。動物研究家、作家、画家等数々の肩書を持つ鬼才と対面するのは美術的画風で注目の漫画家・五十嵐大介。動物と意思疎通する奥義とは

番組内容
前半の舞台は、畑が40年以上暮らしてきた北海道中標津町のログハウス。85歳を迎えた今もここで執筆や描画など精力的に活動している。子供の頃、ムツゴロウの動物番組を見て畑に憧れてきた五十嵐に、畑はこれまで封印してきた動物とのコミュニケーションの奥義を披露する。後半は屋外へ。五感以上の感覚で世界を捉えたかのような五十嵐の独特な作品の源に迫る。絵のスタイルを更新したいという五十嵐に畑は意外な宿題を与える…
出演者
【出演】作家…畑正憲,漫画家…五十嵐大介,【語り】六角精児,平岩紙


『SWITCHインタビュー 達人達(たち)「畑正憲×五十嵐大介」』のテキストマイニング結果(ワードクラウド&キーワード出現数ベスト20)

SWITCHインタビュー 達人達(たち)「ムツゴロウさん」で
  1. 五十嵐
  2. 動物
  3. 自分
  4. 本当
  5. 漫画
  6. ボールペン
  7. 面白
  8. コミュニケーション
  9. 結構
  10. 将棋
  11. 人間
  12. 最初
  13. 表現
  14. 物語
  15. クマ
  16. ムツゴロウ
  17. 自然
  18. 体験
  19. 部分
  20. ゾウ


『SWITCHインタビュー 達人達(たち)「畑正憲×五十嵐大介」』の解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)


解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

☆無料で民放各局の動画視聴ができるTVer(ティーバー)!まずはココから!

他にも、無料お試し期間のあるVODサービスが増えてますので、以下バナーから各社のラインナップを調べてみるのもいいかもしれませんね。

AbemaTV





♬~

どこまでも広がる北海道の大地。

今回の「SWITCHインタビュー」は

その東部 標津郡中標津町から。

やって来たのは…

2019年 劇場公開され話題となった映画

「海獣の子供」の原作者だ。

≪水族館の幽霊。

≪僕たちも同じものを見たんだ。

≪彼はね ジュゴンに育てられたんだ。

≪君が琉花だね。

♬~(「海の幽霊」)

文化庁メディア芸術祭で
優秀賞を2作も受賞した

実力派漫画家。

ボールペンで繊細に描かれる絵は

五十嵐の世界観を実直に表現している。

摩訶不思議な物語も相まって

名だたる文化人たちをも魅了する
五十嵐作品。

「読む漫画」ではなく

「見る漫画」と評されている。

そんな五十嵐が会いたいと願ったのは…

軽々と 私を
持ち上げてしまいます。

80年代から 動物の研究家として

テレビ番組で活躍。

「ムツゴロウ」の愛称で
長く親しまれてきた。

いつも体当たりで野生に向き合う。

大型動物から爬虫類まで

あらゆる生き物と
対等につきあってきた畑。

動物や自身の生活などをつづった
エッセーをはじめ

小説 ノンフィクションなど

これまでに 200冊以上 書き記している。

さらに 画家としての顔も持つ。

その絵は 自己流かつ独特で

根強い人気だ。

そんな畑に子どものころから
憧れてきたという五十嵐が初めて対面。

門外不出のコミュニケーション術とは…。

動物を愛する作家と自然を尊ぶ漫画家が

言葉にならない感覚について語り合う。

♬~

「子どものころ テレビで見た

あのムツゴロウさんに会える」。

期待を膨らませ訪れたのは畑の自宅。

ごめんください。
≪は~い!

どうも 五十嵐と申します…。
どうも お待ちしてました。

どうも はじめまして。
今日は よろしくお願いいたします。

どうも 畑です。

上がっちゃって…。
どうぞ どうぞ…。
失礼します。

こっちが
書庫になってるんですけどもね…。

ここでも 絵を描いたりして…。

畑は 30代のとき

動物を身近に研究するため
東京から北海道へ移住。

以来 この地で暮らし 今年 85歳を迎えた。

畑が最初に案内したのは自慢の書庫。

世界各国の文庫や辞典が
所狭しと収められている。

ああ そうですか。            はい。

それが すごく本当に感動して。

そうだ これを見ていただきましたか?
はい。

すごい貴重な記録ですよね 今となっては。
これはね…

これは 飼われてる犬なんですけど。

そしたら これに ほれましてね

それで「今日 貸してくれ」っつって。

「俺はね…」

で キャンプに持っていって
一緒に寝たんです。            へえ…!

それは いいんですけど

ぞっくりね…

そうか はいはい…。

ボコボコに膨れましたよ。

いやあ… そうか。
はい。

面白かったです この旅は しかし。

そのダニって
どうやって取ったんですか?
うん?

ついたダニって
どうやって落とすんですか?

そうですよね。

お願いします。
ここの部屋は

文章を主に書く部屋なんですか?
そうですね。 ここはね

文章をね 書くんですよね。

やっぱり 僕はね もう…

手で書くことに最初から慣れてまして。

私のころは こんなのなかったですからね。

英文タイプしかなかったですからね。

それで これで書くことにしてたんです。
そしたらね

ここが…

痛くて 痛くて 持てなくなったんですよ。
はいはい…。

五十嵐さんなんかは どうですか?
あれ… 小さいから大変でしょ?

そうですね。 僕も 何となく…
だいぶ 腕は痛めてるんですけど。

まあ だから やっぱり
ペンに ちょっと…。

痛いですね。 まあ でもね
まだ そこまでではないですけど。

えっ?
まだ 我慢すれば 描けるぐらいです。

ああ そうですか。

ボールペンでしょ? お描きになるの…。
そうですね。

ボールペンも使ってます。
ほかの いろいろなペンも使うんですけど。

今 ありますからね
画材がね いっぱいね。    そうですね。

畑は テレビ番組の撮影で

南米アマゾンや アフリカ奥地に至るまで
世界中を訪れ

あらゆる動物と
出会ってきた。

そのコミュニケーションの方法は

いつでも 体当たりだ。

そういうコミュニケーションの取り方

なさいますよね。
そうです。

全部 そうするんだけど。
ああいうやり方っていうのは

いつごろからっていうか
どういうふうに

そういうふうに
たどりついたんでしょう?

クマを飼ってらしたんですよね…?
クマを飼っていらしたんですよね?

当時 まだ深く研究されていなかった
大型動物の生態を知るために

猟師から野生のクマを譲り受け

飼育を始めた。

クマは「どんべえ」という名前でね。
「どんべえ」… はい。

どんべえには教わりました いろいろ。

そうなんですね。
もうね あの…

かんだときは どうすればいいかとかね

そういうのを… どんべえですね。

僕は 一緒に寝ることが一番ですね。

大体…

ひとつきは かかるんですね。

野生のクマとの生活などを通して

大型動物の生態や
コミュニケーションの取り方を学んだ。

そんな畑にも
予想だにしないことが起こる。

それは テレビの収録で

ブラジルを訪れたとき。

虐待された動物たちを保護する施設で

ライオンに語りかけようとした瞬間

指を かみちぎられた。

柵越しに動物と向き合うことのない
畑にとって 落とし穴だった。

そうですよね。
はい。 これはね

かまれたんですよ ガッと。

そしたらね ここを見ると分かります…。

ここ。 これが こう 切れてますでしょ?

はいはい はいはい…。
これはね

檻のね 針金が ここに食い込みまして。

で 引っ張られたでしょ。 これはね

ここ3本 なくすわと思ったんです。

だから とっさに こう 握って

引きちぎったんです。

痛かったですよ 結構。
それは そうですよね。

はい?
痛いですよね。

うん ちょっと痛かったです。 はい。

そうか…。

今 猫を… 今 飼ってる猫が
18歳ぐらいなんですけど

今年 初めて 本気でかまれまして

すごい腫れちゃったんですよね。

それは もう普通です。
あの… 何でしょう。

動物にかまれたときに 最初に…
対処法って どうすればいいんですか?

はいはい はいはい…。
ところがね

檻が こう あるもんですから。

僕は 檻越しっていうのは
つきあうこと ないんですけどね

そこは自然保護団体でね
そういう仕組みになってたもんですから

しょうがなかったんですね。

檻越しに あの… あいさつしたんですね。

福岡県で生まれた畑。

幼少時代を旧満州で過ごしている。

戦時中ではあったが

自然豊かで
野生動物に囲まれた場所だった。

そしたらね…

今日は そろってるな。

あっ すごい。 はい。

へえ~! すごいですね。

あっ これ… 私のうちです! 私の。
ええ~! 残ってたんですか?

残ってたんですか?
残ってたの…。
へえ~!

もう 土の小屋ですよ。           はい。

その当時は 周りには 馬とか

普通にいた感じですか?
馬もいました。

へえ~。
はい。

村で飼ってたのはね。
はい。

周りには 動物って じゃあ 本当に
普通にいたっていう感じなんですかね。

夜になるとね オオカミの遠ぼえが…。
そっか オオカミ…。

はい。 あれね…

それで それがね 「ウウウ…

ウォ~ ウォ アァ~…」って鳴くんですよ。

そういうメロディーなんですね。
はい?

メロディーがありますね。
はい。

もう 鳴き方が 全然違うんですね。
猫でも そうでしょ?

あっ そうですか。
はい。

「ニャオ」「ニャ~オ」
「ア~オ」「ワァ~オ」

「ニャ~オ ニャオニャオ」

「ニャッ!」っていうね
もう 全然違うんですよ。

はいはい…。 そうなんですね。

まあ うちの猫 そんなに…
300もあるかな?

あります。 うん。

日々の暮らしの中で

動物は 鳴き声によって
感情を表現していることを学んだ畑。

その体験を
もっと科学的観点から詰めたいと

東京大学理学部へと進学した。

そこで最初に研究したのが…。

僕のね…

大学院のときにね 教授からね

「お前 原生動物やれ」って
言われたんです。

それで
アメーバ・プロテウスっていうね

こう 何本も 擬足のやつで
はい回るアメーバを

自分で見たんですね。

原生動物への興味をきっかけに
飽くなき生き物への探究心が開花する。

卒業後は学研の映像部門に就職。

徹夜で寝転び 撮影する姿に

同僚からは
「魚のムツゴロウみたいだ」と言われ

今の愛称となった。

そんな研究熱心な畑が
ずっと大切に取ってあるもの

馬の頭骨を見せてくれた。

いい例なんで
取ってあるんですけれど。

宝物なんです 私のね。

これはね
牧草地で拾ったんですよ。       はい。

歯がね ここ 欠けてるでしょ?
はい。

もう… これなんか
もう 緩くなってますね。

そうですね。

これ すぽっと入りますでしょ。

そうするとね 欠けた…
例えば 下が欠けたら上の歯が

上が欠けたら下の歯が
大きくなってくるんですよ。

へえ~!
人間の歯でも そうでしょ。

あの… 例えば 一本抜けると

見合ったほうは
あの… 細工しますでしょ。

ああ~。
それは伸びてくるからなんです。

そうすると こうなってくるとね
動かなくなってくるんですよ。

ああ~ そっか。
こう すり潰せなくなる…?

そうか。 はいはい…。

そうなった例なんですけどね これは。

だから 非常に見事なんですよ。

なかなかね こういうのが
実物で拾えるっていうことは

少ないもんですから。
そうですね。 そうか ここがね

欠けてるとこが ちょうど
盛り上がっちゃってるんですね。

はい。 これが宝なんですよ。

そうですね すごいですね。

動物が相手だとね 知らなきゃならんこと
いっぱいあるんですよ。

ねえ? 僕 話し始めると
口が止まんなくなっちゃう。

中断させてくださいね。

ここで いよいよ 五十嵐は
長年 畑に聞きたかった質問をぶつける。

「どうしたら あんなふうに 動物と

コミュニケーションが
取れるようになるのか?」。

手のひらですね まず第一にね。
はい。

いいですか?
はい。

こうやってね ここに入れるんです。

ねっ?
そうするとね…

おもむろに 手をズボンの中へ。

動物の性器に一番近い箇所に
手のひらを置いてみるのだという。

あの…

ももにもあるし 手にもあるわけです。

こうやって
入れてるでしょ。

そうするとね
最初はね

冷たいか温かいか
っていうのを

どっちの信号で
自分が受け取ってるか

それがね まずね 気になります。

はい。
これを長くやってると

どっち… 触ってるのか触られてるのか
分かんなくなるんですよ。

これがね 僕の秘けつです 第一の。
はい。

そうですね 初めて聞きました。
はい 初めて聞きました。

簡単にいってるように
見えるでしょ?           はい。

でもね…

はい。

指を こうやってね こうやって…。
はい。

「よしよし お前… そうか お前。
そうか。 今日は いい日だね。

よし 遊ぼうね あとで。 遊ぶぞ。
よしよし」。

これがね…

それで訳が分かんなくなるんですね。

そこが みそなんです。

手や指のセンサーで
自分と相手を一体化させ

等身大で語りかける。

それが畑流コミュニケーションの奥義だ。

それは… 何でしょう
文章で表現してみよう

っていうふうにしたことはある…?

今回が初めてです こういう話するのは。

そうですか。
はい。

言葉にすると どうしても 何か
すごく… 何でしょう

そぎ落としてしまうっていうか
入らない部分が すごく多くて。

いや でもね 五十嵐さんだから
今日は 話したいことを話しますけど

それはね あんまり話すと

まねされちゃうでしょ
若い子… 小さい子に。

そうすると けがさせてね

ちょっと
困ったことになるかもしれないと思って

引退するまでは駄目だってね
自分に課してたんです それを。

書くほうにも
それを書いてないんですよね。

それで あの…

今は 「よし!」っていうかね
もう死ぬのは近いんだから

もう死ぬ前に
それを書き起こしてやろうと思って

書いてます 今は。
あっ そうなんですね。

それは すごいお話をお聞きできました。

ついに明かされた この秘けつで

畑は 洋の東西を問わず

どんな動物とも仲良くなった。

科学的な裏付けも同時に行いながら

手のひらで距離を縮める。

中でも
ゾウとの体験は最大の喜びとなった。

スリランカに
ゾウがたくさんいるっていうから

勉強に行ったんですよ。

ゾウがいるんですよ 野生のゾウがね。

13頭いましたかね それ…。
はい。

これは うれしかったですね!

人間に調教されてないゾウですから。
そうですよね。

その中にね 入って

思う存分なことは
できるかどうかっていうことが

僕のね 課題だったんです。

それ やらせてもらいましてね

100日いました そこに。

100日で コミュニケーションとかは

取れるようになるものなんですか?

もうね やっぱり ひとつきぐらいは

ちょっと 他人の感じだったですけど。

もう ふたつき目からね

60… 30日 40日ぐらいからは もう…

たぶん 何か その感覚って それこそ
僕が子どものころとかに

ムツゴロウさんの番組も…

僕も 動物の番組とか結構すごく好きで
見てたんですけども

人間と動物の接し方みたいなことを
ちゃんと描いてるのって

ムツゴロウさんの番組くらいしか
なかったと思う…。

ありがとうございます。 わ~い!
そこで学んできたんじゃないかなって

思うんですけど 感覚的には。
伝わってますね 伝わってますね。

はい そんな気がします。
それは あの… あれですよ。

ありがとうございます。
ありがとうございます。

お互いにね そこはね
分かり合える部分があるんですね。

畑には 知る人ぞ知る
別の顔がある。

それは 勝負師 畑 正憲。

麻雀の中ではプロってことですよね。

ムツゴロウさんは 何か すごい…
そういう勝負事っていうんですかね

何か すごい いろいろなことが
得意だっていう話なので ちょっと…。

うちの子どもは 今 すごく…
上の子は将棋が好きで。

将棋?
はい。

何でしょう
勝負に勝つ秘けつっていうんですかね

何か
そういう心構えみたいなのがあったら

聞いておきたいなと思ったんですけど。
あるんですけどもね

私はね 将棋はね 初段です。
そうですか。

碁はね アマチュアの最高段
六段を持ってます。

それから 麻雀はね
プロの九段を持ってます。

それが すごいですよね。

ある編集者が来ましてね
それが 将棋 好きでね。

ああ… はい。
「将棋は いないからな。

ここは 将棋やるやつがいないからな」
って言うからね。

それじゃあ…
やらなきゃしょうがないじゃないですか。

それで 将棋盤 買って。

「ちょっと待ってな。
俺に1週間くれ」って。

1週間で勉強したのよ。
へえ…。

それで 将棋 指せるようになりまして。

それで
一から彼と勝負をやったんですけど…

すごいですね それは。

それは でも… じゃあ 才能なんですね。

いや それは…

僕はね… 将棋の本を買ってくるでしょ。

それでね もう とにかく徹底して読んで

将棋盤を頭に入れて 入れて 入れて…。

それ 何か
コツみたいなのあるんですか?

その 何か…
そういうのを記憶というか。

あれは…

それを鍛えなきゃ駄目です。

私なんかは 全然 何か…
物忘れがひどいものですから。

っていうか 覚え…
思い出すのが苦手なんですかね。

いや それは訓練だと思いますね。

だから 例えば

馬でもね

ソックスを
はいてるのがいますでしょ

ここ 白いのがね。

あれ… 表 歩いてたら

「なぜだろう?」って思いませんか?
ああ… はい。

ここに白い斑があるのが… ありますね。

「なぜだろう?」と思いませんか。

僕は思っちゃうんですよ。

そうするとね あれは…

はいはい…。

だから 興味を持ったことに対して

もう とにかく とことん ずっと…
何でしょう

集中して とことんまで やっちゃう性分
みたいな感じなんですかね。

それは ありますね。
それは あると思います…。

「諦めない精神の原動力は好奇心なのだ」。

と そこへ…。

対談開始から1時間。

「まだ~?」と来たのは
愛犬のルナ。

ということで 前半は終了。

後半は 舞台をスイッチ。

漫画家 五十嵐大介。

現代の物語に神話やSFを取り入れた
独自の世界観で

数々の名作を放ってきた。

森羅万象をシンプルな線で描いた
当代随一の画力と

幻想的に彩られた物語は

名だたる文化人や科学者からも
愛される けうな作家だ。

なんと 五十嵐
ほとんどの漫画をボールペンで描く。

強弱をつけない柔らかい線を

一本一本 重ねることで生まれる質感。

アーティスティックな作品作りは

同業者からも 一目置かれている。

畑が1970年代に設立した

ムツ牧場。

今も乗馬の体験ができる。

いつも手放さない
スケッチブックとボールペンで

戯れる馬たちを描く五十嵐。

実は
風景を描きたくて漫画家になったという。

息つく間もないスピードで
目の前の情景を描き出す。

♬~

ハハハ…。
どうも。

やってますね。
お邪魔してます。

ここで さっき… そう。
あっちで みんな食べてたので。

へえ~!
まあ 色をつける用に…。

さすがですね。
いえいえ 全然…。

何が?
えっと…

黒目の中の虹彩っていうんでしたっけ…?
ああ~ そうですね。

あっ そうなんですね。

猫とかって縦ですよね?
そうです。

(鳴き声)

ジンベエザメがお好きなんですね それで。
そうですね。

ジンベエザメ 好きです。
ねえ!
ジンベエザメ いたかな?

僕は 基本的に見た目から入っちゃうので。

大きいからですよね まず。
そうですね 大きくて…

あとは 何か あの模様とかも
すごい美しいので。

海の中で見ると また よけい… まあ
海の中で僕は見たことはないんですけど。

でも 水の中にいるときの
あの 光との加減っていうのかな。

美しいなって思います。 はい。

五十嵐の名を 一躍広めたのが

初の長編連載作「海獣の子供」。

豪華なスタッフやキャストで
映画化された。

♬~

物語は 友人とのけんかで

部活動の出入りを禁止になった
少女が

ジュゴンに育てられた

「海」と「空」という少年たちに
出会うことで

宇宙と生命の成り立ちに迫り

成長していく様を描いている。

少年の内側には宇宙が秘められていて

海中は
その宇宙とつながっていたという

独創的な世界観が展開される。

海の中 お好きみたいですね。

ああ… はい そうですね。 でも 海…。

ああ そうですか!
それで あそこまで…?

まあ 想像というか。

何か 前に…

ここは… まあ こっちは
ヒグマが出ますけど

その辺りは ツキノワグマが
結構 しょっちゅう出る所で。

やっぱ 山も… 何でしょう
木が生えてて

木の上にクマが… だから 登って
餌食べてるかもしんないし

すごく低い草むらに隠れるっていう話も
聞いてたので。

だから 何でしょう…

張り巡らされた緊張感を海の中に見立て

漫画に落とし込む。

それは 読者に解釈を委ねるような

五十嵐特有の描写となっている。

「海からきたチフス」
読ませていただいて。

科学者の目線で海を見て

それで ジュブナイルにしてて
すごく面白かったんですけど。

だから むしろ ああいう…

「海獣の子供」とかだと 何か いろいろ
アラが見えるんじゃないかなと思って

ちょっと ドキドキはしてたんですけど。
いやいや そんなことないですよ。

ちゃんと あの… 描かれてますね。

どこで見られたのかなと思ってね
びっくりしてました。

それは 本当に 想像とか…
まあ もちろんね

映像とかで
いろいろ見たりとかっていうのは

参考にしてるんですけど。
映像は よくご覧になってますね。

そうですね。

でも 描くのが
すごい楽しい作業なので

やっぱり 海の中を想像して描くのは
とても いい体験でした。

ああ…。
はい。

小魚が この大きいものの下に
こう 集まってるでしょ。

こういうのでもね

小魚の気持ちを
よく表してます。

小魚もね
一匹ずつね

気持ちを
持ってるんですよ。

でも… そうですね。
でね グワ~ッと集まってね

固まりになってるでしょ。

あれは びっくりしましたね。

パチパチでしたよ 僕は。

潜ってらっしゃらないのにね
そういうのを見てる…

見えてるんだからね
やっぱり 人間の空想の力っていうか…

全然 自分では
そうやって意識してないで描いてみて

描いてみたあとで
何か その描き方が合ってたって

あとで知ることとか 結構多い…。
多いでしょうね そうでしょうね。

それは 何か ちょっと面白いなと…。
ああ…。

あんまり だから… 漫画を描くのって
結構 やっぱり こう

絵の並び方で
どう見えるかっていうことがあるので

結構 何か 理性に かなり…

理性的にというか 考えながら
描かなきゃいけないんですけど

でも それだけを どんどん
詰めていっちゃうと 私の場合だと

何か そうすると どんどん 何か こう
固くなっていっちゃうので。

1969年 埼玉県浦和市に生まれた五十嵐。

子どものころは内弁慶。

少年時代は怪獣映画が大好きで

空想上の怪獣と人間が対決する絵を
描くのが得意だった。

高校で美術部に在籍した五十嵐。

自分を表現できるのは絵だと確信し

多摩美術大学絵画科に進学する。

大学では 教室に籠もって描くよりも
外を散歩することが多かったという。

歩くことで
自然の空気や音などのリアリティーを

体に吸収することができた。

実際に自然の中で暮らしてみたいと

五十嵐は 山奥での農村生活に踏み込む。

衣川村に移住したのは33歳のとき。

以来3年余り
一人 まきを割り 野菜を育て

自給自足の生活を送った。

農業のかたわら 漫画を描く。

これが 後の創作活動の原点となる。

私の前に ちょっと 移住してた人がいて

そこを… 牛小屋を改造して
一応 人が住めるようにしてあった所が

たぶん 7年ぐらい放置されてたのかな。

ちょうど だから 玄関先には 何か
タヌキの白骨化死体があったりとか

最初 行ったときは してて。
ああ…。

何か…
結構 僕は都会育ちだったので

あんまり
そういう経験ってなかったから。

そこから
でも 何ていうか… 面白かった。

面白かったでしょうね。

完全に真っ暗闇で寝るとかも
初めてでしたし。   ふ~ん…。

野菜とか お作りになったんでしょ?
そうですね。

一応 畑と田んぼをやってました。
自分の分だけなんですけど。

だから こういう所で暮らしてたので

そのときに まあ… ボールペンで
描くようになったっていうか。

もともと 何か ふだんも… 何でしょう

スケッチとかメモとか
全部 ボールペンでやってたんですけど。

そうですか。
はい。 まあ 何か…

大変ですよね。

僕も大変でね。
そうですよね。

いっぺんにね
まとめて買ってくるんですけど

それもね ふたを閉め忘れてね
しばらく夢中で考えてたら

蒸発して 濃くなったりね…。
はいはい… そうですね。

気が抜けたりね するもんですよね。

だから 絵の具とかも そう… 何か

なるべく…

それは賢明ですね。
やっぱり プロですね。

相棒となったボールペンで記録し続けた
植物や動物が呼応し合う景色。

自然を体に取り込めれば
架空の物語でも 現実感が立ち現れる。

五十嵐は
独特のスタイルを編み出していった。

全編 ボールペンで描かれた

実体験がベースの
漫画…

主人公の いち子は都会の暮らしに疲れ

生まれ故郷に戻る。

四季折々の
農作業の暮らしを通し

自分の生き方を
見つめ直すストーリー。

都会暮らしでは気付かなかった

自然の豊かさを描く喜びが

作品から あふれている。

田んぼに入ると
水温があったかいので

何か あったかい…
ポカポカしてて。

ちょっと だから かぜ気味のときとかに
田んぼの作業をしてたりすると

逆に こう ちょっと…
元気が出たりとかっていう感じもあって。

何か だから 田んぼって ちゃんと
だから そうやって

温度を保つための仕組みなんだなと思って
水温で。

これは すごい面白いなと思いました。

本物だな。
いえいえ 全然… 本物ではないです…。

やっぱり そういうのを
経験されてるっていうのが

絵に出てますね それがね。

やっぱり 体験したことっていうのは…
何でしょう

出るんですよね。
出るもんですね。

そうですね。
何か そういう… そういう体験が

にじみ出てくる感じの絵がいいなと思って
やってはいるんですけど。

もうね 本当…

それからね タッチのね においです。

物語の発想っていうか。

結構 でも 落書きをしていて

まず 何か ちょっと気になるものを
例えば 紙に描いてみて

で その隣に
ちょっと 関係ないものを描いてみて

で それと また さらに
関係ないものを近くに描いてみると

何となく 関係性が そこで…

それから 話を作り始めるっていうことは
結構…。

あるでしょうね。
多いんですね。
その絵ですよね。

例えば 動物一匹描いても そうですよね。
はいはい…。

それは あの…
拝見してね よく分かります。

あの… 墨の偶然ってありますでしょ?
そうなんですよね。

墨が シュ~ッとなったときに
ええっ? と思って…。

筆先がね
こっちとこっちで圧力が違うんですよ。

そうすると 真ん中が濃くね
こっちが薄く出たようなときがあって。

それが いかにも生々しくてね
ビ~ン! と来てね

そこから こう いろいろ作っていくこと
あるでしょ?

そうですね。 だから… その 何か
偶然の面白み みたいなものを

漫画で だから 全体として作りたいなと
思うんですけど

でも なかなか それも難しくて。
それをおやりになってるって。

僕は感じるんだもん。
そうですか。 ありがたいです。

そう言っていただけると… はい。
そうですね。

自分の中で だから 出来た発想とは
ちょっと言いづらいところがあって。

描いてるところで出来てくるっていう。

そうですね。
それはね

普通の人が
ヒュッと描いたのと やっぱりね…

墨の広がり方 重なり方が
違うんですよね。

そうですね。
それは お感じになるでしょ?

はい。
もう それをね 僕は読み取りましたよ。

それは 何か すごくうれしいです。
そうですか。 本当に よく出てますよね。

それがね
面白がってもらえるんだったら

本当に 描いてて楽しいんで。
ねえ!
よかったです。

それが もう 一番のとこですよね。
そうですね。

絵から答えが聞こえてくるまで
じっと待つという五十嵐。

畑も同じ画家として意気投合。

もちろん 締め切りとかがあるので

時間とのせめぎ合いっていうのも
あるんですけど。

締め切りは しょうがないですよ。
そうですか?

うん 締め切りは しょうがないですよ。
はい。 でも そうですね。

本当に 締め切り なかったら
完成させられないので。     ねえ。

そうですね。
ねえ。 狂っちゃうと描けるでしょ?

それは本当に そのとおりだと…。
ねえ。

もう 狂って 狂ってね もう…

あの…
どうしようかっちゅうときになって

もう そしたら 締め切りとか催促とか
そういうのが全部 すっ飛んじゃって

狂って… 自分が狂ってね

「あっ あっ… ああ~…」って
こう なるとき

それが一番いいでしょ?
そうですね。
ねえ。

そうならないと描けないんです。
描けないですよね。 ハハハ…!

なるべく… やっぱり 事前に
いろいろ調べたりはするんですけど

でも 何か… 調べてるうちって
何か 描けないっていうか

それを 何か 調べたあとで
そのあと 何でしょう…

ああ… そうですね。

「自由に狂って それが表現」。

感性に従って描く五十嵐の芸術魂は

「海獣の子供」でも爆発している。

全5巻を通して

「大切なことは言葉なんかに
しないほうがいい」というメッセージは

波のように繰り返される。

実際に 物語の終盤160ページは

純粋に絵だけで表現を貫いた。

♬~

この辺りは
じっくり見させていただきました。

ありがとうございます。
原画を見ると やっぱり 違いますね。

ここは だから もう
5巻のほうは… 最後のほうは

せりふが ほとんど入らずに…。
はい そうでしたね。

はい 海のシーンだけなんですけど。

こういうところって 何でしょう…。

…と思って
やってみようって思ったのが

そもそもの きっかけというか
動機ではあったんですけど。

まあ 動物とのコミュニケーションとかも
そうなんですけど

やっぱり 人間って視覚に頼ってるし

あと コミュニケーション
言葉に頼るじゃないですか。

だけど…

…が あるような気がするんですよね。

まさに そのとおりです。

でも それ… 人間が見てる世界が
だから 全部じゃなくって

その… 何でしょう…。

でも そういうものって…
例えば 今なんかだと

すごく リモートでの会議とか 何か

画面と音を通じての
コミュニケーションを

今 だから コロナとかで
やらなきゃいけなくなったときに

どんどん忘れ去られていっちゃうような
気がするんですよね。

見えるものと
聞こえるものだけになっていって。

でも 何か それだけだと すごく 何か
そぎ落とされちゃって

世界の本当に一部しか見えなくなって
いっちゃうんじゃないかな…。

今でも見えてないことは多いんですけど
…っていう感覚は すごくあって。

それを 何でしょう 昔から 本当に…

…と 私は思ってるんですけども。

五十嵐の

五感以上の感覚で自然とつながれる
という思いは

畑の 動物を全身で受け止めてきた姿勢に
重なっていた。

五十嵐さんみたいな人が

その心のままに ず~っと いけたら
面白いんでしょうね。

絵にも変化が
また出てくるんでしょうね。

ただ 漫画って…

…っていう部分もあって。

何でしょうね やっぱり こう

人の… 人間の心とかっていうものを
表現するために

こう 作られたというか
何か 成長してきたっていうかな…

そういうふうな表現手段として
洗練されてきた文化だったので

意外と
まあ 記号的な部分があるというか。

やっぱり…

…っていう部分が
やっぱり あるんですね。

いや でも 絵も…
すごく 今 絵を変えたいと思っていて。

何か 漫画を描いているときに
なるべく こう… 何でしょう

手慣れた感じの絵にしたくないと
思っていて。

いつでも 最初に…

ああ… すごいね。
なるべく そうやってたんですけど

でも 漫画以外の… それこそ絵本とか

あと 挿絵の仕事とかを
頂くようになって やってみたら

やっぱり 自分の… 何でしょう
絵の描き方っていうのが

固まっちゃってるなっていうことに
気が付いて。

それを なんとか乗り越えたいと

今 すごく思っているところ…。

でも…

でも そうですね。
うん…。

これまでのスタイルに悩み始めた
五十嵐に

畑が伝えたアドバイスは
意表をつくものだった。

ただね 一つだけ
僕がお聞きしたいのは

あの…

はい そうですね。
あれはね 大変だろうなと思います。

そこは でも なかなか難しくて

動物の性に関して言うと 私 だから
ちょっと分からないことが多くて

なかなか取り組めない
っていう部分があるんですよね。

そうなんですね。
うん。

それをね 今度 お描きくださいよ。

待ってますよ 待ってます それを…!

そうですね。
ハハハハ…!

やっぱり 欲張りだな… いいな。

スタイルを超え
改めて本質をつくような畑の課題。

♬~

難しい宿題を受け取った五十嵐。

今後 どんな作品が
生まれてくるのだろうか。

今 子馬を守る行動が
出たんですね。

♬~


関連記事