ETV特集「サピエンスとパンデミック~ユヴァル・ノア・ハラリ特別授業~」コロナ後の世界を生き抜くための歴史の…


出典:EPGの番組情報


ETV特集「サピエンスとパンデミック~ユヴァル・ノア・ハラリ特別授業~」[字][再]

世界的ベストセラー「サピエンス全史」著者のハラリ氏が、日本で学ぶ若者のために特別授業を開講。コロナ後の世界を生き抜くための歴史の知恵を熱く語る。声:森山未來

番組内容
歴史学者で世界的ベストセラー「サピエンス全史」著者のハラリ氏が、日本で学ぶ若者たちのために特別授業を開講する。コロナ禍の世界で巻き起こるさまざまな出来事・事件をどう捉えるべきか。パンデミック後の世界をどう生き抜くべきか。人類史の教訓をもとに講義し、それを受け止めた若者たちと丁々発止の熱い議論を展開する。出演:ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンの皆さん 司会:道傳愛子 声:森山未來
出演者
【出演】歴史学者…ユヴァル・ノア・ハラリ,【司会】道傳愛子,【声】森山未來


ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 - ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 - 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 - 文学・文芸


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  20. パンデミック

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)


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(拍手)

軽井沢にある
インターナショナルスクール。

ここで一回限りの
特別な授業が始まろうとしています。

講師は 世界的に注目を集める
あのベストセラー作家。

イスラエルで育ち

イギリス・オックスフォード大学で学んだ
歴史学者です。

著書「サピエンス全史」は
世界60の言語で出版されました。

1600万部以上の売り上げを記録。

人類250万年の歴史から
「現代」を読み解くという

独自の視点が 話題をさらいました。

そして今 パンデミックに覆われた
時代においても

ハラリさんの視点は 注目を集めています。

私たちは今 歴史の変化が加速する時代に
突入しています。

次の数か月で
人類は…

…を行うことに
なるでしょう。

こんな時代だからこそ

人類史から得られる教訓を
若者に届けたいと

「漫画 サピエンス全史」をかき下ろした
ハラリさん。

日本で学ぶ生徒との対話を
楽しみにしていました。

歴史学者として言えることは…

…ということです。

生命の歴史で最大の力を持ちながら…

ユヴァル・ノア・ハラリ。
未来へ向けた授業が始まります。

♬~

Hello. Nice to meet you.
(生徒たち)Nice to meet you.

こちらこそ。 皆さんと そこに一緒に
いられればよかったんですが。

実は オリンピックで
日本へ行く予定だったんですが

行けなくなりました。

いとこが日本の女性と結婚して
沖縄に住んでいるんです。

来年こそは行きたいですね。

(笑い)

そうなるといいですね。

はい もちろん それで大丈夫です。

ハラリさんは ベストセラー
「サピエンス全史」の中で

人類の250万年の歴史を…

…という 3つの段階に分けています。

その中で最初に登場するのが

7万年前に起きた「認知革命」です。

人類 すなわちサピエンスは

目の前に存在していない事柄
「フィクション」を想像力で作り出し

それを他人と共有する力を
身につけました。

集団でフィクションを信じるようになった
この「認知革命」こそ

サピエンスが世界を支配するようになった
理由だと記しています。

このことは パンデミック下を
人類が生き抜くための

重要なヒントにもなると
ハラリさんは提言します。

人間がですね
世界を支配する力を持てたというのは

大人数で協力し合えたからなんです。

これは 他のどんな動物にもできません。

皆さんは「人間は賢くて唯一無二の存在だ」
と思いたいかもしれませんが

単独では 人は チンパンジーや
ゾウやブタよりも 弱い存在なんです。

でも チンパンジーは100万匹…

1000匹だっとしても
協力することは無理なんですが

人間であれば 100万人でも 10億人でも
協力し合うことができるんです。

チンパンジーに対してね

「今 バナナをくれたら
死んだあとに天国に行けるよ。

そこでは たくさんのバナナがもらえるよ」
と約束しても

それを信じるチンパンジーは
いませんよね。

でも人間は そういったストーリーを
信じるからこそ

協力することができるんです。

ピラミッドの建設から 月への飛行まで

人類の偉業というものは全て
大規模な協力で実現しました。

100万人が同じストーリーを
信じることができれば

たとえ知り合いでなかったとしても
協力し合うことができるんです。

それは 私たち人間だけがなせる技です。

経済のシステムにしても同じです。

お金もまた
私たち人間が発明したストーリーです。

地球上の他のいかなる動物も
お金を使うこともないし

その存在すら知りません。

世界のお金の9割以上は
コンピューター上の単なるデータです。

新型コロナの危機の中 各国の政府は
何も存在しないところから

数兆ドルものお金を
生み出しているんです。

パンデミックによる世界規模の経済危機。

各国は給付金などのために

総額1200兆円を超える
空前の財政出動を打ち出しました。

そこで生まれるのが

史上最大の国の借金
国債です。

各国の中央銀行は今
国債を買い支えるため

膨大な量の通貨を
発行しています。

銀行が白い紙にお札を印刷して配れば

なぜか国民は物が買えるようになる。

ハラリさんは これも

サピエンスがフィクションを信じることで
得られる力だと考えます。

だからね
お金は単なるストーリーなんです。

そこにリアルな価値は存在しません。

円でもドルでも お札を食べたり
飲んだりはできませんよね。

それに今日では お金の大半は
刷られることすらなくなりました。

例えばですね 誰かがパソコンの上で
ゼロをちょっと増やすだけで…

ポン! まるで手品みたいに
何もないところから

数兆ドルものお金が生み出される。

そして驚くべきことに
アメリカ人に限らず 世界中の人間が

それを信じているんです。

アメリカを敵と見なす人でさえです。

う~ん 例えば
ジハードを叫ぶイスラムの人々も

活動資金はアメリカのドルです。

これは本当に驚くべきことです。

少なくとも「お金」というストーリーには
世界中の人々が合意しているんですから。

巨大な危機に直面している今
みんなを団結させる

より良いストーリーが
生まれてほしいと願っています。

コロナに限ったことではありません。

生態系の崩壊や人工知能
科学技術の発達が招く混乱など

とてつもない課題に
私たちは直面しています。

もし私たちが団結しなければ

未来は決して
明るくないものになってしまうでしょう。

なるほど。 最も重要で複雑な
「宗教」についての質問ですね。

まず私たちが認識すべきことは

信心深い人にとって
自分が信じる宗教以外は

全てフィクションに見える
ということなんです。

ユダヤ教徒は
イスラム教をフィクションと見なし

「ユダヤ教こそが真実だ」と言うでしょう。

イスラム教徒は
「ヒンドゥー教はフィクションだ

我が宗教こそ真実である」と言うでしょう。

みんながみんな
「私の解釈こそが正しい。

それ以外は人間が勝手に作った
ストーリーだ」と言うんです。

でもね 敬けんなイスラム教徒なら
同意するはずですが

人間は どんなに頑張っても 「神」を
本当には理解することができないんです。

人間が その限られた知能で
神を理解しようとしても

必ず失敗に終わります。

そして「神は 長いあごヒゲを生やし
雲の上に座った老人だ」みたいな

ストーリーやフィクションを
生み出しているんです。

宗教というものは
「答え」を与えるものです。

「このストーリーが答えだ。
受け入れなさい」以上。

私は 信仰心は あまりないほうなんですが
「精神性」のある人間だと思っています。

精神性とは 「自分は何者か」
「人生とは何か」

「何が善で 何が悪か」という
問いを持つことです。

一方 宗教は答えを与えるものです。

イスラム教もユダヤ教も仏教も

全ての宗教には
その本質に精神性があります。

私たちは まさに
その精神性でつながるべきなんです。

「これを信じなければならない
話は終わり」というような

答えを押しつけることは
避けなければなりません。

それは まさに私たち次第です。

ストーリーの中には
対立を生むものもあれば

結び付けるものもあります。

私は ストーリー自体が
悪いと言っているわけではないんです。

それは道具なんです。

例えば ナイフは
人を殺すために使うこともできます。

そして その同じナイフを使って

医者は手術で腫瘍を取り除き
患者の命を救うこともできます。

その同じナイフを使って

レストランのシェフなら
おいしい料理を作ることもできるんです。

ナイフのほうは気にしません。

ストーリーも同じです。
それは道具なんです。

ストーリーを正しく使えば

私たちを結び付ける
最強の手段となりえます。

力を合わせて 病院を建設したり

気候変動と
闘ったりすることができるんです。

でも戦争や迫害など
悪いことに使われないように

注意しなくてはなりません。

常に 選択です。

いつでも私たちは 危機にどのように
対応するのかを選択できます。

憎しみを生み 感染症の流行を
外国人やマイノリティーのせいにし

分断を選ぶのか。

それとも 思いやりを生み 連帯感を育み

資源を分かち合い 情報を分かち合うのか。

それは私たち次第なんです。

究極的には 選択の基準は

それが苦悩を生むのか
幸福を生むのかだと思います。

ストーリーが
より多くの苦しみを生むのか

それとも 自分や他の人たちの苦しみを
解放するのか

そこが大いなる物差しとなるんです。

Thank you for the lecture.

何より大切なことは
ストーリーが全知全能の神ではなく

あくまで不完全な人間によって
作られたものなんだと理解することです。

例えば 私が10代の頃

自分がゲイであるということに
気づきませんでした。

なぜなら同性愛者を激しく嫌悪する
社会で育ったからです。

1980年代のイスラエルでは

「神は同性愛者を嫌悪する」という
考えが根づいていました。

男性である自分に
ボーイフレンドがいたら

神の怒りを買い 地獄に落ちると
言われていました。

そして そのストーリーは
神から来たもので 反論の余地はないと。

でも 成長して歴史を学ぶようになり
私は気づいたんです。

「いや このストーリーは人間が
作ったものにすぎないんじゃないか」と。

「もし 神が存在したとして

人を愛することで
果たして神が人間を罰するだろうか?

男性同士 女性同士で愛し合い
誰かを傷つけるわけではない

何が問題なのか」と。

これは聖職者が 2000年前だとか
2500年以上前に作った

ただのストーリーであって
絶対的な真実ではありません。

一度このことに気づけば
信心深い人たちでさえも

変わり始めるでしょう。

そうすることで

自分と異なる人やコミュニティーを
受け入れる余裕が生まれます。

全ての人が全く同じ存在である必要は
ないんです。

今回 この特別授業に
ご協力頂いたのは…

この世界をより良くしたい
という大志を抱いた若者が

世界84か国から集まっている
国際高校です。

奨学金制度を設けることで

最貧国や 紛争が絶えない地域からも
優秀な生徒を集めています。

今回の授業のために 生徒たちは

それぞれのお国柄を反映した質問を
準備してくれました。

更に授業に臨むのは

中央アジアに位置し
多くがイスラム教徒である

タジキスタン出身のメリモさん。

アメリカ出身で
インドにルーツを持つ ジェイさん。

南米・ボリビアの
山岳地帯近くで育った ホアキンさん。

日本から
カイさん ユイナさん

そして ユカさんです。

認知革命に続く

人類のターニングポイント。

それは
1万2000年前に起きた「農業革命」です。

穀物の栽培に成功し 富を得たサピエンス。

それは 支配する者と される者の
区別を生み

ヒエラルキーの誕生につながりました。

現在に続く「格差」や「貧困問題」も

ここに端を発すると
ハラリさんは考えています。

農業革命とは
何よりも「支配すること」でした。

それ以前 人間は動物を狩り
植物を採集してきましたが

それらを支配しようとはしませんでした。

サバンナに行って
シマウマを狩ったとしても

シマウマに対して どこへ行き 何を食べ
誰と交尾すべきかを

指示したりはしませんでした。

しかし ひとたび農業を始めると
常に「支配」を行うようになります。

動物を檻に閉じ込め
何を食べるべきか 何を食べないべきか

どのオスが どのメスと
交尾するかさえも決めます。

それは 地球上に人類が誕生してから
初めて行われたものでした。

それまで何億年もの間
生物が存在してきましたが

この手の支配は
少しも見受けられませんでした。

農業革命が起きて初めて
なるほど! 他の生き物を「所有」できる

それらは私の「所有物」だ と
考えるようになったのです。

ひとたび この考えが生まれると
それは どんどん拡大されます。

「そうだ! 牛や 鶏を所有していいのなら
『人間』だって所有していいだろう」となる。

実際 奴隷の誕生は
農業の誕生と時期が重なります。

大勢の人間を支配するエリート層や王
司祭といった人々が現れ始めます。

同じ時期に 男女の関係にも
変化が見られるようになりました。

「そうか! 牛や奴隷を所有できるなら
女性を所有していけないはずはない」

そうやって 夫が妻を所有するという
考えが生まれたのです。

これも ほぼ同時期に誕生しています。

農業革命以来 ずっと人間は
それを正当化しようとしてきました。

ヒエラルキーは正しいという理由を

何度も何度も
繰り返し考え出してきたのです。

「そう 人間は家畜を所有していい」
「そう 王は奴隷を所有していい」

「そう 男性は女性を所有していい」。

それを正当化するために あらゆる
ストーリーをでっちあげてきたんです。

ですが言うまでもなく
それらは単なる作り話。

生物学の法則に
基づいたものではありません。

ホモ・サピエンスが
牛より優れているなどというのは

私たちが
でっちあげた話にすぎないのです。

ですから「正当化できるか」という
あなたの問いに対する答えは

「ノー」です。

科学的観点からしても

王が 所有する農民や奴隷よりも
優れているとは思えません。

しかし人類は
実際に そのようなストーリーを

何千年もの間 信じてきました。

そして残念なことに 特定の集団が
別の集団よりも優れているとか

一方の性が他方よりも優れているとか

そういったストーリーを信じる社会が
いまだに存在します。

今年5月 パンデミックのさなか
急速に広がった

人種差別に対する大規模な抗議運動…

テニスプレーヤー・大坂なおみさんも

ジョージ・フロイドさんをはじめ

理不尽に殺された人々の名前を記した
マスクをつけ

連日 全米オープンに出場。

決勝までの7試合
抗議の意志を示しました。

この運動は今も
世界で続いています。

その影響を予測することはできません。

私たちが この先どんな
選択をするかによって決まるからです。

もちろん賢明なのは 団結することです。

ウイルスに対する…

そうしないのは 私たちの持つ最強の力を
放棄することを意味します。

パンデミックを解決するには

世界の国々が
知識や情報を共有すべきですが

実際に人々がそうするかどうか
私には分かりません。

歴史学者として言えることは

人間の愚かさを決して
みくびってはいけないということです。

人類は 生命の歴史で
最大の力を持ちながら

幾度となく誤った選択をしてきました。

残念ながら それが
再び繰り返される可能性があります。

ブラック・ライブズ・マターに関連して
少し付け加えます。

人種差別というのは
人間を残酷にするだけでなく

愚かにもさせます。 弱くもさせます。

自分の属するグループが
他よりも優れていると思うこと

つまり 自分たちの人種 国 宗教だけが
世界で唯一優れていて

他者は劣っていると考え
その知恵や洞察に学ばないのだとすれば

それは自らを弱体化させ
愚かにさせることになるのです。

人種について言えば 3万年 4万年前には
黒人も白人もありませんでした。

それらは ずっとあとの時代になって
考え出されたものです。

生物学的レベルにまで掘り下げると

私たちは誰一人として
純粋なホモ・サピエンスではありません。

今の人間のDNAには

ネアンデルタール人などの
他の種の遺伝子が混在しています。

アフリカに誕生した私たちサピエンスの
先祖は 世界各地へと広がり

4~5万年前に
ネアンデルタール人やデニソワ人など

他の人類の種と交配したという確証が
ほぼ得られています。

ですから純粋な人種というような概念や

自らの伝統にのみ固執するというのは
ほとんど意味をなさないのです。

先月 入院から丸3日で退院した
トランプ大統領が話題となりました。

ええ そのようですね。

これは 億万長者でありながら

税金を僅か750ドルしか
払わなかったとされている

あの人の話ですね。

アメリカ大統領に限らず
世界中で大勢の大富豪や企業が

税金を免れる手口を見つけ出す
優秀な納税顧問

弁護士 会計士たちを
雇っています。

あらゆる税金逃れのトリックを
見つけようとしてです。

実際には 何十億もの人々に いい医療を
提供できるお金が存在するのに。

そしてパンデミックの最中でさえ

一部の人間が
とんでもない金額をもうけています。

世界の大富豪が 更に裕福になり

その一方で 膨大な数の人々が
生計の手段を失っています。

国のレベルでも パンデミックへの
対応の差が見受けられます。

個人の権利を守りながら
民主主義的に対応し

抑制と均衡やプライバシーを保つ
国がある一方で

以前に増して 権威主義的ないし
全体主義的になっている国もあります。

とてもいい質問です。

人間は複雑な生き物です。

同時に 複数の集団に属し
関係を築いています。

そうした中で人々は 家族 仕事

国 人類 真実 美などに対して

同時に忠誠心を持つことができます。

ナショナリズムであれ 宗教であれ
イデオロギーであれ

100%の忠誠心を要求さえしなければ
問題はありません。

問題が生じるのは 「一つのことのみに
忠誠を尽くせ」という

動きが出てきた時です。

例えば 「忠誠を尽くす必要があるのは
国家に対してだけだ。

だから国家が
大勢の人間を殺せと命じたならば

殺さねばならない」というような。

「国家が嘘をつけと言えば 嘘をつく。

国家の栄光をたたえるためにのみ
芸術を創造し

その他の芸術は 一切放棄する」

そのようなことを求めるのは
ファシズムです。

ナショナリズムが「国だけでなく
他にも忠誠心を持って良い」とする一方

ファシズムは「大切なのは国家だけ。
他は一切重要ではない」とします。

このような極端なものを避け

現実は複雑だ
人は さまざまな関係性を持ち

複雑なストーリーが必要だと
認めることができれば

実行可能な妥協案を見いだせるでしょう。

忘れてはならないのは…

…ということです。

対立する相手を
ひとたび敵や反逆者と見なせば

いずれ内戦や暴力に
つながってしまいます。

というのも 敵との闘いにおいては

最終的に民主的な決定を
受け入れられないからです。

リアルな戦争を 民主的な選挙で
終結させることはできません。

例えば 中東で長年対立してきた

イスラエル人とアラブ人
全員に投票させても

紛争は解決できません。

「なぜ自分を憎んでいる敵の意見を
受け入れなければならないのか」。

そうなると秩序は完全に崩壊します。

この状況を回避したければ

合意できる共通点を
懸命に見いださなければなりません。

農業革命により 社会にヒエラルキーを
生み出したサピエンスは

16世紀に入り 「自然界」をも
根本から覆しかねない力を手にします。

「科学革命」です。

科学技術の進歩により

サピエンスは
地球を支配するまでの存在になったと

ハラリさんは指摘します。

しかし人類は それゆえに
あまりに傲慢になっているのではないか。

「漫画 サピエンス全史」の中で
ハラリさんは

太古から 「生態系」を
破壊し続けてきた人類を

「連続殺人犯」と呼び
法廷で裁いています。

まず 私たちは自らの計り知れない力と
それゆえの責任を自覚するべきです。

地球上の他の動物と比べ
私たちは今や 「神」です。

神という感覚はないかもしれませんが

野生動物である海のイルカにしても
サバンナのチンパンジーにしても

また 家畜の牛や鶏は言うまでもなく

他の動物との比較において
間違いなく私たちは 「神」なのです。

これらの動物の未来は
完全に私たちの支配下にあります。

私たちの許可があってこそ
これらの動物は存在できるのです。

もし あしたの朝 世界中の全ての
ライオンを殺そうと思い立ったとしても

そうするのには
僅か2日しか かからないでしょう。

簡単なことです。

動物の肉体を操作することさえも
可能です。

特に家畜は 野生の種とは
完全に異なります。

私たちは 高度なバイオ技術で
家畜の肉体を改造してきたのです。

そうした神のような力を持っていることを
私たちは自覚するべきです。

なぜなら これまで神として
あまりに無責任だったからです。

生態系の劣化ないし破壊は
今 至る所で起きています。

それは 将来のことではありません。

生態系の破壊は エボラ出血熱や
新型インフルエンザなど

次々と人類を襲う感染症も
生み出していると指摘されています。

新型コロナも また
環境破壊の中で起きた

野生動物と人間との接触に
起因すると言われます。

近い将来 未知なる感染症が
再び人類を襲うことへの

警鐘も鳴らされています。

今 生物の生息域全体が
破壊されつつあり

さまざまな種が
驚くべき早さで消滅しています。

…にさらされているのです。

時間は あまり残されていません。

数千年という単位ではなく
数十年単位です。

つまり あなた方の世代が生きている間に
限界を超えてしまうかもしれない。

生態系崩壊に
もはや歯止めをかけられない状況に

陥るかもしれないのです。

一部の人間は
どうにか生き延びるでしょう。

しかし 迅速に行動しなければ
無数の動植物だけでなく

数十億もの人々を
巨大な苦しみが襲うかもしれません。

命を落とす可能性さえ あります。

重要なのは 私の考える消滅は
必ずしも絶滅ではないということです。

かなり ざっくりとした見積もりですが
向こう100年ないし200年の間に

ホモ・サピエンスという種が
消滅すると考えています。

それは根本的に異なる2つのしかたで
起こる可能性があります。

1つは 私たちが自らを
絶滅させてしまうこと。

今後 数十年の間に生態系の危機が加速し
政治危機が引き起こされた結果

核兵器 あるいは
生物工学や人工知能を使った

破壊的な兵器が用いられる
という結末です。

これが予想される 1つ目のシナリオ。

暴力的 かつ完膚なきまでの
破壊がありえます。

1945年にヒロシマとナガサキに
核爆弾が落とされ

人類は初めて
自らを破滅させうることを知りました。

しかし 今のところ
そのような状況は起こっていません。

人類が自らを完全に破壊する可能性は

いくらかはあっても
あまり高くはないでしょう。

筋書きとして よりありうるのは

新たな科学技術を用いて
人類が自らをアップグレードさせ

何か別のものへと変化することです。

それはチンパンジーと私たちとの
違いほどではないですが。

いずれにしても種の消滅は
絶滅によって起きるとは限らず

別の何かに進化する場合もあるのです。

おととし 中国の ある研究所が

人の受精卵の遺伝子情報を
書き換えた

「ゲノム編集ベビー」を
誕生させたと発表。

その真偽は分かりませんが

私たち自らの手で
人類の遺伝子を改変していいのか

世界で議論が巻き起こりました。

100万年前にはホモ・サピエンスとは異なる
人類の種が いくつも存在しましたが

別のものに進化して 消えました。

そうしたことが 私たちにも起こりえます。

ただし かつてより
はるかに早いスピードで起こるでしょう。

自然淘汰による進化には
何十万年という歳月がかかります。

しかし 生命を設計する技術によって

それが僅か数十年で起こる
可能性があるのです。

人工知能や生物工学を用いれば

2100年か2200年までに私たちは

肉体と頭脳を改造する
巨大な力を持つようになるでしょう。

私たちの子孫は 全く違う種類の生き物に
なっているかもしれません。

こちらのほうが
ありうる筋書きだと思います。

自然淘汰という生命進化の基本原則は

次第に生命工学に
取って代わられつつあります。

雲の上の神々によって
行われるのではなく

人類の技術が
進化の推進力となりつつあります。

生命体が自然淘汰によって進化するのと
意図的に設計されるのとでは

そのプロセスは全く異なります。

これは…

…となるでしょう。

私たちの生きている間に
起きるかもしれません。

驚異的なことですよ。

重要なのは 私たちが今まさに肉体や
頭脳や精神を改変するテクノロジーを

手に入れつつあると認識することです。

それは とてつもない力を持った技術です。

人が それを利用しないとは
到底 信じることができません。

禁止もしないでしょう。

人類は外見も思考も
私たちとは違うものになるのです。

とても重要なのは
それでも私たちは動物だということです。

先ほど 私たちは神だと言いましたが…

そして今 コウモリのような
野生動物に由来するウイルスが

僅か数か月で地球全体を覆い

文明を揺るがしかねない状況です。

ですから 2つの観点を
同時に持たなければなりません。

力を持つという意味では神であり
大きな責任を負う必要がある。

しかし 動物としては
生態系に完全に結び付いている。

だから 人間が生態系を破壊しながら

その衝撃波から
守られるはずはないのです。

とてもいい質問です。

新型コロナであれ 気候変動であれ
私たちは団結する必要があります。

社会で最も弱い立場にある人を
守るための

地球規模のセーフティーネットが
必要です。

発展途上国が自分の力だけで
問題を解決することはできません。

そのために地球規模で団結できるのか。
それは分かりません。

私たち みんなに かかっています。

特に あなた方 若い世代が
その責任を担って

人類が直面する地球規模の問題に注目し

そこから取り残される人が
一人もないように

取り組んでもらいたいと
心から願っています。

この先 私たちは どこに向かうのか
誰にも分かりません。

20年 30年後に 社会や政治が
どうなっているのか見当もつかないのは

歴史上 初めてのことだからです。

若い皆さんにとって
困難な時代だと思います。

年上の知恵が 当てにできないからです。

2050年に 世界がどうなっているか
予想もつきません。

逃げているわけではありません。

「大人になれば分かる」
ということでもありません。

私にも本当に分からないのです。

だから私たちには
あなたたちの助けが必要です。

誰かが教えてくれるということは
もうないのです。

これは 私たちみんなのプロジェクトです。

年をとった人も 若い人も
みんなが力を寄せ合って

人類共通の問題を解決していくことを
私は望んでいます。

(拍手)

Thank you.
(拍手)

♬~

♬~

人類史から
パンデミック後の未来を考えた

一度限りの特別授業。

真剣に取り組んで下さった
ユヴァル・ノア・ハラリさん

そして ISAKの生徒の皆さん

ありがとうございました。


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