アナザーストーリーズ選「“北斗の拳”誕生~舞台裏のもう一つの“格闘”~」 数奇な縁で結ばれた3人の男たちが名作を生み出すに至る…


出典:『アナザーストーリーズ選「“北斗の拳”誕生~舞台裏のもう一つの“格闘”~」』の番組情報(EPGから引用)


アナザーストーリーズ選「“北斗の拳”誕生~舞台裏のもう一つの“格闘”~」[字]


格闘漫画の金字塔「北斗の拳」。連載が終了してから30年以上経っているが、今もその人気は健在だ。数奇な縁で結ばれた3人の男たちが名作を生み出すに至る痛快な物語。


詳細情報

番組内容

漫画「北斗の拳」は、少年ジャンプに連載された格闘漫画。アニメ化もされ、その人気は社会現象にもなった。人生が変わるほど心を揺さぶられたという人も少なくない。漫画・原哲夫の「迫力ある絵」と原作・武論尊の「泣けるセリフ」。その陰には、伝説的な編集者・堀江信彦の尽力もあった。名作誕生の舞台裏の、壮絶な「格闘」とは?人気声優、神谷明&千葉繁の貴重な証言も。名作漫画誕生の舞台裏に迫るアナザーストーリー!

出演者

【司会】松嶋菜々子,【語り】濱田岳




『アナザーストーリーズ選「“北斗の拳”誕生~舞台裏のもう一つの“格闘”~」』のテキストマイニング結果(ワードクラウド&キーワード出現数ベスト20)

アナザーストーリーズ選「“北斗の拳”誕生~舞台裏のもう一つの“格闘”~」
  1. 漫画
  2. 北斗
  3. 堀江
  4. 武論尊
  5. ケンシロウ
  6. 当時
  7. 一人
  8. 連載
  9. 自分
  10. 世界
  11. 物語
  12. セリフ
  13. 三浦
  14. 子供
  15. 主人公
  16. 人生
  17. シーン
  18. 原稿
  19. 最初
  20. 才能


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この夏 東京の私鉄の駅名が変わった。

全ては この漫画から始まった。

名作誕生に秘められた物語。

♬~

(爆発音)

「おまえは もう 死んでいる」。

このセリフ あのころ
学校で大はやりでした。

漫画 「北斗の拳」。

舞台は 核戦争が起きたあとの近未来。

暴力が全てを支配する荒野に
この男が 降り立ちます。

北斗神拳の伝承者 ケンシロウ。

力がないものは殺されるしかない
弱肉強食の世界を旅していきます。

出会うのは 義理を貫く者や

野望に駆られたライバル。

彼らと しのぎを削りながら

ケンシロウは
自分の宿命を全うしていきます。

累計発行部数は 海外も合わせ…

実は私も 兄の影響で読んでいました。

ユリアへのラオウの ゆがんだ愛に
心を熱くした一人です。

漫画「北斗の拳」は 今も人々の記憶に
深く刻まれている。

ケン。

Fingers… プシュー!

「北斗の拳」が連載されたのは

1983年からの僅か5年足らず。

圧倒的な絵の迫力と

登場人物たちの
名ゼリフの数々が

読者の胸を打った。

しかし 2人だけでは

あの名作は生まれていない。

そこには 運命としか言いようのない
縁で結ばれた

3人の男たちの知られざる物語があった。

運命の分岐点は…。

少年ジャンプで
「北斗の拳」の連載が始まった日です。

第1の視点は
この漫画を描いた若者です。

原 哲夫 当時21歳。

写真から
うかがえるように

穏やかで 暴力なんて
まるで縁のない男性です。

漫画家を夢みたものの
なかなか認められず

ダメ出しばかり受けていた
無名の存在でした。

しかし 一人の編集者に
隠れた才能を見いだされます。

人生を変えた数奇な巡り会い。

「北斗の拳」誕生の裏にあった
知られざるアナザーストーリーです。

とあるビルの一室で その男は
今も漫画を描き続けている。

描き込みの多い
迫力のあるタッチは 今も健在だ。

しかし今 原の右目は
ほとんど見えていない。

「北斗の拳」に全身全霊をかけて
打ち込んだ 4年10か月で

体がボロボロになったという。

めっちゃ歯食いしばって描いてるし

怒りのシーンとかも
「クァー!」ってやってるし

泣きのシーンは
泣きそうになりながら描いてるし

もう全部ひどいですよ 顔が。
「カーッ!」とかやって描いてますから。

「ワーッ!」つって
「グヒャー!」とかいって。

話は 1970年代の終わりに遡る。

大手出版社が販売部数を競い合う

少年漫画戦国時代を
迎えていた。

そのころ 漫画を描いては
持ち込んでいた男がいた。

原 哲夫。 まだ高校生だった。

当時 原が描いていたのは
例えば こんな漫画。

人間の影の部分を表現しようとしていた
暗い劇画だった。

(原)だから僕 あの当時ですと

「ガロ」とか ああいう
マイナーな感じで

4畳半で ちょっと
好きな漫画

描いていければいいや
みたいな。

結構 何ていうんですか
ネガティブな感じでいたんですよ。

結構 絶望的な感じで
まあ 好きな絵でも描いて

暮らしていけりゃいいかな みたいな。

原は 昭和36年に東京で生まれ

幼少期を埼玉県で過ごした。

勉強が苦手で 運動も不得意。

赤塚不二夫が描くギャグ漫画が

うつうつとした毎日を
つかの間 忘れさせてくれたという。

小さい頃から 暇さえあれば
チラシの裏に好きな絵を描いていた。

絵は抜群に うまかったが
物語を作るのは苦手。

雑誌には なかなか掲載されなかった。

「イラストか漫画で
生計を立てられないか」。

高校卒業を間近に控えた原は

わらをもつかむ思いで
少年ジャンプ編集部を訪ねた。

当時 ジャンプは
新人の発掘に力を入れ

そこから多くの人気作品が
生まれていた。

なんとかアシスタントの仕事を
紹介してもらえないかという相談。

その時 一人の男が対応してくれた。

当時 24歳の若手編集者。

人気漫画 「キャッツ・アイ」などを
手がけた やり手だ。

この時 持ち込んだ漫画が これ。

気の弱い刑事を描いた 描きかけの漫画。

正直 微妙な出来だった。

しかし堀江は 意外な反応を見せる。

堀江さんが すごい気に入ってくれて
そこから意気投合したんですよね。

「飯 食いにいこう」とか言って。
いきなり 高校生の僕に。

で 定食屋に連れていくんですよ。

家にいるから
おふくろの飯が食えるんで

「別に定食とか食いたくないんだけどな」
とか思いながら。

すごく気に入られてたのは
感じてましたね。

堀江は 原にアシスタントの仕事を紹介。

何かと面倒を見てくれることに。

一体 堀江は 原の何を評価したのか?

漫画にはなってないんだよ。

要するに なんか 30ぐらいの男性がね

パチンコ屋でパチンコを打ちながら
荒れてるっていうかね。

絵のうまさは分かったよね。

「ああ この人は描き込み すごいな」
と思ってね

やっぱり絵を えがくことの執念みたいな
集中力っていうか

それは その7枚8枚の原稿でも
分かったからね。

描き込みの多い原の絵は

当時のジャンプの人気漫画とは
ひと味 違っていた。

「この才能を育てれば これまでにない
新しい漫画が作れるかもしれない」。

原と堀江の二人三脚が始まった。

後に2人は
「北斗の拳」のもととなる

短編漫画を生み出す。

しかし そこに至るまでには

3年という長い
年月が必要だった。

堀江の指導のもと 原はまず
何本かの読み切り漫画を発表。

その1本は賞も受け
少しずつ自信を持ち始める。

当時 原には
いつか漫画にしたい映画スターがいた。

筋肉ムキムキな体と この表情。

もう お分かりだろう。

(叫び声)

中国拳法で 自分より大きな相手を

バッタバッタと打ち倒していく姿に
憧れた。

かっこいい なんかポーズとか
しぐさみたいなの

すごい覚えてますよね。

やっぱ映画館も 何回も行って

スケッチブック持って
メモしてましたからね。

僕が そういうタイプじゃなかったんで
憧れが強かったんじゃないですか?

どっちかっつうと
やられる方でしたから。

更に 憧れのスターが もう一人。

アクション映画やハードボイルドな映画で
絶大な人気を誇っていた…

ブルース・リーと松田優作さんが
好きだったから

あの2人の要素を入れた主人公は
絶対 描きたいっていうのがあって。

他の人が誰も やってなかったんですよ。

絶対みんな見たいはずだと
思ってたんですよね。

原は 2人をイメージした
中国拳法の漫画を描きたいと思い

堀江に相談する。

しかし逆に
全く違う企画を持ちかけられた。

それは 当時人気が出始めていた
モトクロスを題材にした漫画。

堀江は レースの魅力を熱く語り…

…と太鼓判を押した。

「河川敷にモトクロスやりにいくぞ」
って言われて 「え~!?」つって

一番ちっちゃい 80ccかなんかの
バイクに乗せられて

「ちょっと走ってみろ」とか言われて
「え~!?」とか言いながら

いきなりバーッて ウイリーしちゃって
ひっくり返ったっていう。

正直 興味を持てるネタではなかった。

しかし あまりの堀江の熱意に
その気になり

原は 初めての連載を勝ち取る。

ようやく つかんだ大きなチャンスに
必死に取り組んだ。

しかし 人気は出なかった。

始まって1か月たたないうちに
編集部内で打ち切りが検討され

僅か10回で終了する。

連載終了を伝えられた日のことを
今も よく覚えている。

6週目か何か描いてる時に
堀江さんが部屋に来て

それで 「次の連載の話しよう」
って言ったんですよ。

「えっ?」と思って。 6週目ですよ。
まだ知らないんですよ 終了するの。

そりゃもう絶望ですよ。
21ぐらいですから。

「俺って売れない作家なんだ」みたいな。
もう烙印 押されたみたいな。

2度目のチャンスって普通ないんですから
よっぽどのことがないと。

目の前が真っ暗になった原。

その一方で堀江は
全く めげていなかった。

実は 連載終了を最終的に決めたのは

ほかならぬ 堀江だったのだ。

当時の編集長だった西村さんが

「あれ 何なら続けてもいいんだぞ」
っていう話をしてくれました。

でもね やっぱり僕は
原さんと つきあってて

原さんはね やっぱり
もっと大きな話が描けるって。

だから この「鉄のドンキホーテ」に
こだわるよりも

一回 仕切り直しした方が絶対
原さんのためになるなと思ってね。

それで勝手に あの…

「連載は もう終わっていいですよ」つって
言っちゃったのかな。

「次 失敗したら 今度こそ後がない」。

原は 一つの決意を固める。

「自分が面白いと思うものしか
描かない」って。

人気がないっていうのが
嫌だったんですよ。

要するに 読者が喜んでくれてないって。
自分の漫画で。

だって 必要とされてない
ってことだから。

もう絶対
自分が面白いと思うものしか描かない。

原は 「次こそ中国拳法の漫画を
描かせてほしい」と堀江を説得する。

しかし 一つ問題があった。

格闘漫画に欠かせない必殺技が
何も思いつかない。

主人公たちが繰り出す
派手な必殺技は

子供たちの人気を左右する
重要な要素だった。

原が頭を悩ます中

堀江が 会社近くの古本屋で
面白い話を見つけてきた。

(堀江)中国の本ばっかり売ってる
本屋があってね

そこに入って医学書の所で
こうやって見てたら

そしたら 中国の医学生がね
ツボを研究しててね

そのツボの 目のいいツボを刺激してたら
刺激しすぎちゃって

目が見えなくなっちゃったとか
書いてあったわけ。

「これだ!」って思ってさ。

要するに ツボっていうのを
経絡秘孔を利用することで

格闘技の必殺技 究極の必殺技が
できるよなって思ったの。

2人のアイデアが融合し
一つの漫画が完成する。

読み切りとして月刊誌の巻末に
ひっそりと掲載された。

主人公は 現代に生きる高校生…

「姿三四郎」のイメージで
名付けた。

必殺技は…

この読み切りには 後の「北斗の拳」に
つながる さまざまな要素があった。

ラスト近く 主人公は
こんなセリフまで しゃべっている。

読み切り版 「北斗の拳」は

読者の人気アンケートで
見事1位を獲得する。

この漫画に衝撃を受けたのが
堀江の1期上の先輩編集者。

当時 鈴木は 「キャプテン翼」を担当。

強力なライバルの登場を
予感したという。

大体 頭の方の
表紙も飾ってるゲスト作品が

アンケートをとるのが通例なんだよね。

だから その時… 編集部には
衝撃が走ったんじゃないかと思いますよ。

もう完全に…

そして9月 「北斗の拳」の新連載が
少年ジャンプで始まった。

物語を作る原作者を別に立て

原には絵作りに
集中してもらうことになった。

舞台設定や主人公の年齢を
もとの読み切りから変更。

荒廃した近未来の世界を さまよう

一人の男の物語
として始まった。

次々登場する強大な敵を

寡黙な主人公 ケンシロウが

北斗神拳を使って打ち倒していく。

その壮大なストーリーは
迫力満点の絵の力と相まって

瞬く間に読者の心を つかんでいく。

当時 原のアシスタントを務めていた…

原の すさまじいまでの こだわりを
目の当たりにしている。

こういうページ。

モブキャラがいるんですけど

実際の原稿用紙では
この辺まで描いてるんですよね。

この辺まで もういっぱい描いてて。

でも絶対 うつらないって
分かるんですけど。

分かってても なんか
絵の勢いを殺したくないって感じで。

しかし 毎週20ページほどの漫画を
描き続ける週刊誌の連載は

予想以上に
過酷なものだった。

もうボロボロで 風呂も
3日も4日も入ってないんですよ。

堀江さんに こうやって渡して

堀江さんは 「遅えんだよ」とか言いながら
こうやって見て…。

「はい 次の原作」って バンと渡すんだよ。
で 「次 打ち合わせするぞ」つって。

俺 「この人 鬼かな」と思ってた。

毎週地獄ですよね だから。

その圧倒的な熱量は読者に伝わり

「北斗の拳」は人気アンケートで
1位を とり続けた。

しかし堀江は こうしたアンケート結果を
原には伝えず

あえて厳しく接した。

原さんは あんまり褒めすぎてもいけない
タイプだったと思いますよ。

あんまり言わないでね

「こんなもんか まだ?」とかね
言うぐらいの

ちょっと厳しい意見は
言ったかもしれないですね。

褒められると
調子に乗っちゃうタイプなんで。

だから パワハラとかね
今言ってますけど

ああいうのがなかったら
できないと思いますね 漫画なんて。

怒ってくれる人がいないと。
僕の場合ですけどね。

しかし その一方で堀江は

よりいい漫画を描けるよう
必死にサポートした。

堀江さんが全部 芝居してくれるんですよ。

「ここのシーンは
こういうふうに芝居してな…」って。

「無抵抗の村のやつが 老人が
こう いてな…」みたいな。

そういうのをね 事細かに
芝居してくれるんですよ。

僕 見ながら 時々ウルッときたりとか
ゾクッときたりとかしながら。

それで僕は イメージ膨らんできて
目がギラギラしてきたら

なんかこう 「こいつ 分かってんな」
っていう感じになって

「じゃあ いけ」みたいな感じ。

原が特に力を入れていたのは
男たちが戦うシーン。

格闘シーンの表現については
ほとんど原に 一任されていた。

中でも 話題となったのが…。

ブシューっていう。
ハハハ。

敵がケンシロウに倒され
死ぬ時に発する断末魔の叫び。

これまでの日本語にはなかった擬音が…

例えば この 「ひでぶ」。

ハートという巨体の敵の
断末魔だが…。

あれ 「いてえ」と 「ぶー」なんですけど

「ひで」になって 「ぶー」ですよね。

「ひでぶー」で 「でぶ」もかかってるし
「でぶ」に ちょうどいいな みたいな。

でぶの死にざまに
ぴったり合うみたいな。

しかし あまりに斬新な表現だったため

当初は編集部にも
全く理解されなかった。

字 間違えてると思って
直されてたんです ずっと。

普通の文字に。 はい。

「え~!?」つって。
「誤植じゃねえよ!」と思って。

「俺 すんげえ考えて やってんだよ!」
とか思って。

何度も挑戦して 「ひでぶ」が
やっと通ったんですよ。

こうした表現に ここまで原が
こだわったのには訳があった。

でも やっぱり赤塚先生とかも
やってましたからね 当時から。

「レレレのレー」から始まって。
「ケームーンパスパス」とかね。

「パスパスパス…」とか。

おかしいでしょ そんなの。

それで育ってるから 僕ら当たり前
なんですよ そういう変な言葉。

やっぱり人が死ぬというのはね あんまり
リアルに描きたくないなっていうか

ちょっと笑えるような感じに
滑稽さみたいなのが出ると

緩和するんじゃないかな
っていうことで。

気付けば ジャンプの発行部数は
100万部以上 伸びていた。

この間 いつも頭にあったのは
毎週 漫画を楽しみに待つ

かつての原自身のような
子供たちのことだった。

僕も やっぱ赤塚先生とか
ちば先生とかの漫画で

すごい癒やされて
救いになったっていう。

少年時代 ほんと希望がなかったのに

漫画で希望を もらえた
っていうのがあるんですよ。

だから漫画って そういうものでしょ
っていう思いがあるから

漫画を読んだ人に絶対喜んでもらいたいな
っていう気持ちしかないんですよ。

だから すごい世界中の人が
日本中の人が こう喜んでる

「このシーン見たら…」つって

一人一人の顔を浮かべながら
描いてましたから。 ええ。

「このシーン見たら
みんな どう思うかな」みたいな。

それをワクワクしながら
描いてるんですよ。

ボロボロになりながらも
熱い絵を描き続けた 原 哲夫。

そして 「北斗の拳」が
ファンの胸を揺さぶった

もう一つの要素が…。

数々の名ゼリフでした。

そのセリフを生み出し
物語を作り上げた男が 第2の視点です。

自衛隊出身という変わった
経歴を持った人物です。

武論尊が物語を考え
原 哲夫が絵を描く。

そんな役割分担で
「北斗の拳」は作られましたが

実は連載中 2人は会話を交わしたことが
ほとんどないと言います。

不思議な関係の2人。

漫画を高め合った男たちの
アナザーストーリーです。

今年71歳になった この男。

毎日の懸垂を欠かさない。

漫画原作者 武論尊。

(取材者)大体5回を?

これ5回 これを5回で
大体10回を2セットか。

50年近いキャリアを持ち 今も現役だ。

この鉛筆の先から
あの独特の世界観が生み出された。

名作誕生の秘密を聞くと
いきなり こんな答えが返ってきた。

もう根っから うそつきだからね。
ほんとなの。

大体 物書きなんて うそつきの言い訳の
うまいやつだからね 俺に言わせると。

そもそも武論尊が 「北斗の拳」と
関わることになったのは…

ジャンプでの連載にあたって

編集者の堀江が選んだ
原作者候補の一人にすぎなかった。

本命だった候補者とは
話が まとまらず

次に名前が挙がったのが 武論尊だった。

もとの漫画を読んで興味を持ち
この依頼を受ける。

ただし その場で 一つだけ条件を出した。

とりあえず
「現代劇では無理だから」とは言った。

このままの高校生の拳法ものでは
俺は書けないとは言った。

肉体とか拳法の強さを出すなら もう

近代兵器ない方がいい
っていうのはあったんで

とりあえず武器のない時代にしよう
っていったら もう

原始の世界に戻るか
近未来に行くしかないんで。

たまたま 「マッドマックス」があったんで
近未来にしよう。

「マッドマックス」の世界で

拳法の達人を活躍させる…。

「まあ なんとかなるだろう」。

これまでも 流れに身を任せるように
人生を歩んできた。

武論尊は 6人きょうだいの
末っ子として

長野県の農家で生まれた。

高校に進む余裕はなく 貧しい暮らしを
抜け出す道として選んだのが…

ここで 一人の男と出会い
意気投合する。

後に 「男一匹ガキ大将」や
「俺の空」

「サラリーマン金太郎」を大ヒットさせ

人気漫画家となる男だ。

武論尊は7年間 勤めたあと…

既に漫画を描いていた
本宮のところに転がり込んだ。

しかし 絵は大の苦手。

アシスタントとしては
使い物にならなかった。

いやあ 絵っていうのは特殊能力だから
絶対無理。 うん。

だから よく 手伝えって
「忙しい 手伝え」って言われて

「ホワイトかけろ」とか ベタ塗るじゃん。

で ベタ塗る時に
俺は わざと はみ出すわけ。

そうすると 「お前 やんなくていい」
ってなるから仕事しなくていいという。

まあ パターンですよ。

昼間から酒を飲み
マージャンばかりしていた。

しかし 人を楽しませる話術にたけ
不思議と好かれていた。

少しでも働くようにと紹介されたのが
「漫画の原作者」という仕事。

ここで武論尊は
意外な才能を発揮する。

最初に書いた原作が
すぐに採用

雑誌に掲載された。

そして 28歳の時に手がけた
「ドーベルマン刑事」がヒット。

人気漫画原作者の一人になった。

しかし そのあとが なかなか続かない。

「北斗の拳」の原作の話が
持ち込まれたのは

武論尊が 次のステップを模索し
もがいていた頃だった。

全身全霊を込めて書いた 第1話。

自分でも手応えを感じる仕上がりだった。

しかし 出来上がった原の原稿を見て

武論尊は衝撃を受ける。

(武論尊)「ああ やられた!」って思ったね。
こんな描き方するんだという。

バイクがボーンと出てくるシーンとか
俺のイメージよりは すげえっていう。

一応 俺 これ シーンを作って
原作するんだけど

映像を作って それを文章に
落としてくんだけど

俺が書いたものよりも
ものすごい映像として出てきたから

この子… この子って 原先生は
すっげえ才能あるんだと思ったのが

最初かなあ。

うわ~ 負けたくないから
もっといいもの作ろうとかなるし。

原の絵に負けない物語を作ろうと
武論尊は必死になる。

そして書かれたのが 第2話だ。

ケンシロウは
荒野で 一人の老人と出会う。

老人が大切そうに持っていたのは…

荒れ果てた世界に緑を取り戻す
かすかな光だった。

ケンシロウは つぶやく。

「久しぶりに人間にあった気がする…」。

しかし 老人は
略奪者の手によって殺されてしまう。

ケンシロウの怒りが爆発。

北斗神拳で 老人の敵を討つ。

そして 老人の墓に 種モミを手向け

未来への希望を感じさせて
このエピソードは幕を閉じる。

僕は 実は個人的には
2回目で あの…

鳥肌が立つぐらい面白いと思ったんで

もちろん編集部では
そんなことは言わないんだけれど。

泣きっていうか
人間の情に訴えるっていうのが。

単に強いだけの漫画だと
やっぱし奥行きがなくなっちゃうんで。

それこそ ほんとに
子供も大人も 男も女も みんな

心に やっぱしジーンとくるね
いい話だったと思うけどね。

しかし この2話

最初に武論尊が書いた原稿には
「種モミ」の話はなかったという。

それを引き出したのは 編集の堀江だった。

最初に出来た原稿だと 何となく
ただ あらすじを追ってる感じだった。

これじゃ人の気持ちは打たないなって。
で ケンシロウの良さも出ないと。

締め切りが迫る中 最初の原稿で
既に 原に絵を描かせていた。

堀江は それでも
武論尊に書き直しを求めた。

最終的に 原先生に原稿を渡してるのに
まだ納得いかなくて

「もう一度 考えましょう」って
やってるわけだから。

「なんか食い足りない
面白くない」って言うんで

粘って粘って 最終的に絞り出したのが
老人と種モミだったから。

「あ これですよ!」って言って
原先生のとこ行って

「悪いけど描き直してくれ」って言って
一から描き直したという。

全員がギリギリまで粘って仕上げた
この回は 大評判。

作品の向かう方向と
3人の信頼関係を決定づけた。

両方のいいところをね
足し合わせなきゃいけないんでね

1+1が2じゃダメなんですよね。

やっぱ 1+1が
3とか4にならないとね。

頼りになる漫画家と編集者。

武論尊は 持ち前の
「面白い話を作る」才能を

存分に発揮していく。

例えば ケンシロウの胸についた…

最初のね 連載の時に
胸に7つの傷つけといて下さいって。

俺はもう こんな使うと思ってないのよ。
ただ ファッションとして

かっこいいなと思って
つけといてって言っただけなのよ。

しかし あとで
重要な伏線として使うことを思いつく。

3回目か4回目の時に初めて堀江君と
「おい なんで こいつ 旅してるんだ?」。

で 初めて その時に
女を追いかけることにしようとか

その時に 胸に7つの傷が
ついてるじゃんってなって

これは じゃあ シンってやつに
女を取られる時につけようとか。

その時に 俺 思いついた時に
「俺は天才だ」と思ったからね。

ハハハ! 後付けの。

それが 第8話。

ケンシロウが かつて
最愛の女性を奪われ

その時に
7つの傷をつけられたことが分かる。

主人公が旅を続ける目的が
明らかになる

重要なエピソードとなった。

先の展開を あまり決めずに

読者の反応を見ながら
ストーリーを作っていくのは

当時のジャンプのやり方だった。

あんまり先まで考えると
面白くないんですよ。

やっぱり ある程度のアドリブ性
っていうのが傑作を生む秘けつだから。

だから… 先のことなんて

2~3話ぐらいまでしか
考えてないよね。 大体の方向性。

その中で アンケートとか何かに
もまれながら

修正していく 練り上げていく
っていう作業が

連載するっていうことの楽しさだから。

こうした中で 武論尊は
重要なキャラクターを生み出す。

それが ケンシロウの…

最初に登場したのが すぐ上の兄…

人の「醜さ」を象徴する
ずる賢い男として えがかれる。

連載が進む中 武論尊は

残りの2人の兄弟のキャラクターを
深めていく。

で その時に

「なんで四男坊が伝承者になってるんだ?」
っていうところから始まるわけだ。

そうすると何か いきさつがあって
ケンシロウが伝承者。

でも絶対 長兄が一番強いわけだ。
で その すごいキャラクターが出てきて。

そうすると この長兄は
そんなことよりも 力で

いわゆる力 強さで 国を治めようとしてる
ってキャラクターが自然に出てくる。

で その対極で次男坊がいて
これは もう

めっちゃ一番 やれば強いんだけども
ちょっと体が弱くて

そのかわり医者を 北斗神拳を使った
医者をやってるって

それは もう
一つの対照としての作り方だから。

北斗神拳を
傷ついた人々の治療に役立てる…

人の持つ
「優しさ」の象徴だ。

そして 巨大な力で
全てを従わせようとする…

弱肉強食の世界を
体現する存在で

ケンシロウの
最大のライバルとなっていく…。

武論尊は 連載の間じゅう
ほとんど原と顔を合わせなかった。

間に立って 2人の意見を受け止め
調整する方が うまくいく。

堀江の戦略だった。

作品のために 8歳年上の武論尊にも
堀江は容赦なく

ダメ出しを続けた。

原稿を目の前で読むから
分かるのよ。 こうやって…。

そしたら 何も反応なしに
パサっと置くわけ。

その瞬間 「あ 書き直しかい」って…。

妥協はしないよ 作品に関しては。
ほんとに。

何回も こいつ ぶん殴ったろかと
思ったことあるよ。

とにかくね そこで へこたれて

妥協して帰ったら アウトだから。

僕なりの 「ここまでは いける」っていう
自分の目安みたいなのがあって

そこから上回れば
もう文句 言わないけど

ちょっとでも下回った時は
「まだ やれるでしょ?」と。

だって それで
その緊張感を30分続けたら

直してくれると思ったら もう
その30分 我慢するしかない。

でも それを嫌がったら… ね?
結果 不幸になるから。

だから それは やるって決めてました。

食べるために ひょんなことから始めた
漫画の原作という仕事。

しかし 「北斗の拳」は
これまでとは明らかに違っていた。

試行錯誤を繰り返していた頃の
武論尊に

大きな影響を与えた出来事がある。

連載が始まる前 武論尊は

ポル・ポト政権が崩壊した直後の
カンボジアを訪ねた。

独裁政権の下で 力を持たない者は

いとも簡単に命を奪われていた。

道端には 無数の人骨。

(武論尊)ほんっとに…
ほんっとに骸骨の山ばっかだからね。

そこで ほんとに
すごいことが起こったのを

現実に見たってのは…。

これは ちょっと… 何だろう

人生がコロッと変わった感じはあるね。
行ったことでね。

それは バブル景気に向かう日本では
想像もできなかった

世界の もう一つの現実だった。

この経験が
武論尊が えがく登場人物に反映され

セリフに深みを与えていく。

そこには 自分の信じる
何かのために闘い

懸命に生きる人々がいた。

そして ケンシロウと
最強の敵 兄ラオウとの

最後の決戦。

それは 互いの命を削り合う
壮絶な戦いとなった。

紙一重の差で ケンシロウは勝つ。

敗れたラオウは 膝を屈することなく

一つの言葉を残して
立ったまま息を引き取る。

「北斗の拳」は 多くの読者に語り継がれる
伝説となった。

「わが生涯に一片の悔いなし!!」ってのは
あれは多分

俺の中の「北斗の拳」に対する
思いだろうから。

これ最終回だと思って書いてたから
俺も 原先生もね。

多分 俺… 多分
自分自身に対して言ったセリフだよね。

そんな気がするね。

ほんとに 自分の才能と正対して

一番真摯に立ち向かった
闘ってたっていうか

その4年間かな?

…のような気がするな。

原 哲夫と 武論尊。

弱肉強食の世界に
2人が えがいた 人間の魂。

その物語に
当時小学生だった私も夢中でした。

例えば このユリアのセリフ。

「わたしに与えられたのは 限られた命。

ならば なに事にも抗うことなく

天命の流れのままに生きようと
思いました」。

この「北斗の拳」に勇気を もらい
人生が変わった人たちがいます。

それが 第3の視点です。

一人は 「北斗の拳」に魅せられて
海を渡り

もう一人は 人生の どん底を救われ
新たな人生を歩みました。

「北斗の拳」が支えた
不屈のアナザーストーリーです。

「北斗の拳」は
少年漫画という枠を超えて

多くの人の人生に
さまざまな影響を与えている。

東京 杉並区に

「北斗の拳」を愛してやまない男が
暮らしている。

「北斗百裂拳。
お前は もう 死んでいる」 はい。

2年前に
イタリアから日本に移住してきた。

(エンリコ)オリジナルの原先生のサイン。

恋人と一緒に暮らす部屋も…

ご覧のとおり。

エンリコは 子供の頃から背が高かった。

しかし スポーツは大の苦手。

目立つ分 よく いじめられた。

次第に 学校を休みがちになる。

そんな時 たまたまテレビで見たのが…。

「北斗の拳」のアニメ。

ケンシロウが弱い者を助ける姿に
憧れた。

執念に まさる
俺の怒りだ!

いじめられっ子だったので。

結構 僕のそばにケンシロウが
いてほしかったんですね あの時は。

まあ なんか
ヒーローが必要だったんですね。

「北斗の拳」について
もっと知りたいと思い

大学で日本語を学んだ。

キャラクターの しゃべってるセリフは
ほんとに なんか

字幕じゃなくて 字幕なしで知りたい。

なんか 僕も そういうセリフを
しゃべりたいと思ったので。

♬「YouはShock 俺の胸に落ちてくる」

大学卒業後 エンリコは
日本への移住を決意する。

そして 去年からは
憧れの原 哲夫が所属する会社に就職。

日本の漫画を世界に発信し

編集者として 海外の漫画家を
サポートする仕事に就いている。

壁に ぶつかった時には 今も必ず

「北斗の拳」を読み返すという。

「北斗の拳」だったら。
ほんとに あの…

ここ 青森県北津軽郡 板柳町にも…。

「北斗の拳」によって救われた人がいる。

(三浦)一番強いんだから
一番強く書かないとダメなんだよね。

地元の子供たちに書道を教えている。

(三浦)失敗してもいいんだって。

三浦は 去年
ある書道展を開き 話題になった。

これは その時の映像だ。

子供たちが書いているのは全て
「北斗の拳」の必殺技。

三浦が 「北斗の拳」を読み返し
心を揺さぶられたのは

40歳を過ぎてから。

なんか落ち着いてくる。

「よし!」っていう感じ… かな。

でも止まんないよね これね
読んじゃうとさ。 ほんとに。

その時 三浦は

命に関わる大病を
患っていた。

読み進むうちに
改めて とても魅力的に映った

登場人物がいたという。

ケンシロウの兄である トキや
友となった レイだ。

助ける人が きれい。

レイもトキも
ケンシロウの後ろで支える人。

私も そういう人になりたいわけ。

後ろにいる人たちの
つらいこととか悲しいこととかを

ケンシロウが ギュッと
背中さ のせるから

100%の力を出していけるっていうか。

幼い頃から字が きれいだった 三浦。

かつては 広い書の世界で活躍する日を
夢みたこともあった。

でも今は 主役にはならなくとも

人の心に何かを残す人生があることを
知っている。

(三浦)
その人一人だけだば できないことって
世の中も たくさんあるけど

その後ろで支えてあげれる…

この人が 力を思う存分
発揮するためには

安心して背中を任せるじゃないけど
支えてあげれる。

習字でも そう。

私が出るんじゃなくて

子供たちが やっぱり
輝いてもらいたいというか。

一人でも多くの子供たちを
書道で笑顔にしたい。

三浦の何よりの願いであり 喜びだ。

やっぱり ラオウのね

「わが生涯に一片の悔いなし!!」が
かっこいいなと思います。

35年前に誕生し
今なお 人々の胸を打ち続ける漫画

「北斗の拳」。

考えると 「北斗の拳」に
えがかれたほどではないにせよ

理不尽な目に遭い
どん底に たたき落とされても

勇気を振り絞って 自分を
奮い立たせなければいけない瞬間は

誰にでも ありえること。

今 あなたの心を支えているものは
何ですか?

そうそう 「北斗の拳」を語る時
忘れてはいけないのが…。

あたたたたたたたたた!

視聴率20%を超え
一大ブームを巻き起こした

熱いアニメだ。

お前は もう死んでいる。

あ~たたたたたたたたたたたたたたた!

うあ~たたたたたたたた!

主人公 ケンシロウを演じた…

ケンシロウの怒りが爆発する瞬間を
どう表現するか 毎回工夫した。

服が脱げるシーンが
あったじゃないですか。

怒りを表現する手段なんですけども
その時も

だんだん持ち上げていこうって…。

「うぁあああ~!」っていう
その「ああ~!」の声の中に

怒りが あふれていくという
情感を表現したんですよね。

「雑魚キャラ」と呼ばれる
名もなき登場人物が死ぬところを

演じ続けた…

ふざけやがって
うだっ!? うだ うだ うだぁ~!

毎回 アドリブを まじえて絶叫。

手元に酸素ボンベを用意して
演じていたという。

自分の声で 脳震とう
起きちゃうんですよね。

もう毎週ね 倒れてましたもんね 僕。

スタジオで うずくまってましたもん。

目から蒸気 出るんですよ。

そして…

その後 少年ジャンプの編集長になった。

当時の 653万部という発行部数は

歴代最高記録として
いまだ破られていない。

作者の 原 哲夫。

右目の視力が衰え

今は 月に7ページを
描くのが やっと。

アシスタントの手を
借りながら

好きな漫画を描き続けている。

2人は今も 漫画家と編集者として
コンビを組んでいる。

お互い 誓っていることがある。

ここまでにしてもらったという
恩義があるので。

どっちか死ぬまでは…。

だから 僕も死ぬまでは
やろうと思ってますけどね。

異なる才能を持つ3人の男が
偶然 出会い

生み出された 「北斗の拳」。

物語は 平成の世を迎える前に
幕を閉じた。

今も 格闘漫画の金字塔として

色あせることのない輝きを放っている。


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